あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

澤藤統一郎の憲法日記

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邑久光明園  藤本トシさん


ハンセン病文学全集4(記録・随筆)に載っていた藤本トシさんの随筆は今回で終わりです。全部載せたのは、どれもすばらしかったから。




音と声から



 不自由者の寮は、皆まっすぐ東から西へ延びて建っている。その中の私の寮は、そこに八つの部屋が並んでいて、その北側には三尺の通し廊下がついている。
 その廊下を何人かの人工の足が、ぎゅーぎゅーと忍ばせようのない音で歩き、とっさきを布に包んだ松葉杖は、こつ・・・こつ、こつ・・・と遠慮そうに行き、盲人の足はすーすーっと探りながら、それでも元気に通りすぎて行く。
 そのたびに、どの音からも冷たい過去が匂い、それを越えて来た、意志のほてりがくる。
 だが私をふくめてこの人々の峠道は、まだまだ遠く遥かである。野球や相撲のクイズに興じているのは、道の辺の木陰に憩うひとときなのだ。写真または書画を習い、歌作句作に耽るのは、荒野に咲いた野の花にしばし見とれているのである。
 ともかくこれからの尾根は互いにもっと呼び合って越えよう。こだま
をおこそう。励ましの思いを谺に託して一歩一歩登ろう。
 時計が午前九時をうった。治療時間・・・そう思ったとたんに、がたん!と廊下で重そうな音がした。外科の出張治療である。あちらからも、こちらからも、足や手を持ってくる。すりむいた肱も薬缶でやった居眠りやけどの顔も、柱で打ったおでこもくる。これがすむと、眼科と耳鼻科の出張。ちゃりん・・・。しゃーしゃー。こちこち。いろいろな音がする。この音が病の軽重にかかわって、ある時はうれしく、ある時は言いようもなく侘しい。が、どちらにしても、治療が終われば安堵の胸を撫でるのである。
 今日もその時がきて、やれやれと背を伸ばしたとき大声が聞こえた。
 「やあ、百円飛んでくぞー、そっちの方へいくぞー」
 猫のことである。寮での飼育は禁じられているのだが、どこからくるのか近頃たいへん殖えて、困った揚句が一匹百円で買い上げるふれが出たのである。しかし、いくらお金が廊下を走っていても、たとえそれが百万円であっても、残念ながら私の寮では、誰一人拾える者はいないのである。




 丘に佇って夏の海をじっと見ていると、いや感じているとである。私の眼うらに波しぶきを上げてお御輿が通る。わっしょい、わっしょい、わっしょい。日をはねかえして瓔珞がゆれ、鳳凰が輝く。白鉢巻の力んだ顔がなおいっせいに、揉め揉め! わっしょい!わっしょいと叫ぶ。その中に父の声がある。兄の声も交じる。風に青蘆がなびいて見物の母の顔がちらちらする。
 あれから三十余年。私が遊びたわむれたのは太平洋の波であった。今・・・瀬戸内海に向かって私は心で言ってみる。わっしょい、わっしょい・・・。すでに父も母も兄も不帰の客なのだ。
 孤独、これは淋しい。だが私の場合それは幸いなことでもある。食卓からホークを口で探り取り、味噌汁の熱度を舌で計っていたとしても、花畠へ迷い込み、お目玉を貰っても、冬は着物にゴム靴を履き、そのうえ小雨でもふれば頬冠りといういでたちでお風呂へ行っても、したたか頭を打って、「やっぱり電柱にゃあかなわない」と半泣きをかくしていても、ふるさとからの深い嘆きの眼ざしを感じないで済むからである。不遇の子を持つ親の心にふれるほど切ないものはない。
 真さんはよく母親のことを言う。末っ子だから親も子もよけいに心にかかるのであろう。そのためか、母親は七十を過ぎているのに毎年面会に来る。それが来ない年があった。そのとき彼が私に言うには、
 「今日手紙が来たよ。ばかに部厚いので何が入ってるんだろう・・・と思って開けてみたら、手形と足形が出てきたんだ。そして手紙にはこう書いてあったよ。
 今年はいろいろな都合でどうしても会いに行くことができません。それで母さんは手形と足形を送ります。私はこの足でお前のそばへ行き、この手でおまえを撫でているつもりです。だからお前も母さんの心をくんで此度は我慢して下さい」
 彼はそれきり言わなかった。
 夜、蝉の声を聞いて、その方の空を仰いでいると、通りがかりの友が揶揄した。
「闇夜だぜ、だが良い眼にゃ何か見えるのかい」
「私の満月貸してあげる。見てごらんなさい」
向ってきた寂寥から、私はひらり体をかわした。そして「お見事・・・」と我と我が身に喝采を送ったのである。



藤本トシさんの略歴
1901年2月5日、東京生まれ。1919年に発病し、民間病院に通院後、1925年、身延深敬園に入園。1929年5月、外島保養院に転所。1934年、室戸台風により外島保養院は壊滅状態となり、全生病院(現、国立療養所多摩全生園)に委託される。1938年、外島保養院が邑久光明園として再建後、帰園。園の機関紙「楓」の創刊後、短歌、詩、随筆などを投稿していた。1987年6月2日死去。随筆集『藤本トシ』(1970復権文庫)、作品集『地面の底が抜けたんです』(1974思想の科学社)。楓短歌会『光明苑』(昭和28年)


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大島青松園  赤沢正美さん(11)



またひとりひとりが泛かび戦時下に逝きたる君らうつつに若し




ふつふつと沸き上りくるどの顔も切なし一人ひとり逝きたり




骨堂の棚に並びて君も君も臓腑なしらいの悲しみもなし




草原の草に立つ風秋めきて日暮るるときにこころ飢ゑゆく




脳髄もはらわたも透けてゆく風にさやさやと秋の草ひびきをり




はばからず競ひ合ふ声みちみちて夜の庭先は虫たちのもの




草原の虫達の華やかな夜へ飼ひならしきし悲哀を放つ




近道をこころみて見事迷ひたる白杖に冬の砂やはらかし




寒菊はまだ咲かぬらし匂ひなき庭の真昼の一切の空




寒菊の花咲き初めて暮れはやき夕庭の冷え香りをもてり





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大島青松園  塔 和子さん(13)


五月


花々が野山を飾り

海がやわらかい色に変貌し

風が羽毛のように頬をさすってゆく

この明るい世界は

這い出すとかげ 飛び交う蝶 肥えた猫

農耕にいそしむ男

針を運ぶ妊婦

洗濯物を未来に向って干す女

人は

彼方からくるものに

眉間を輝かせ

生きている喜びにはち切れそうに見えるが

  花は極限を

  とかげは生きるために他の生きものをねらい

  そのとかげは猫にねらわれ

  妊婦は難産の

  男は疲労の果てのうすい毒を

みんないちように

あらがいがたい

自らの負う黒いかげを宿していて

見つめていると

明るさの底がじんわりと透けてくる














嘔吐


台所では

はらわたを出された魚が跳るのを笑ったという

食卓では

まだ動くその肉を笑ったという

ナチの収容所では

足を切った人間が

切られた人間を笑ったという

切った足に竹を突き刺し歩かせて

ころんだら笑ったという

ある療養所では

義眼を入れ

かつらをかむり

義足をはいて

やっと人の形にもどる

欠落の悲哀を笑ったという

笑われた悲哀を

世間はまた笑ったという

笑うことに

苦痛も感ぜず

嘔吐ももよおさず

焚火をしながら

ごく

自然に笑ったという



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夏野菜の蒸し煮



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熱した無水鍋に大さじ1の油を入れ、下敷きにタマネギのスライスを置き、乱切りしたナス、ピーマン、ズッキーニを置き、ミニトマトを置き(ここまで混ぜない)、煮立ったら極弱火にして25分、火を消して余熱5分で蓋を開け、ニンニク醤油で味付けし、混ぜて出来上がり。



オクラを使った2品

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1分半茹でたオクラは冷水にとり、半分は薄切りしてカツオブシをふり、醤油で。残り半分は乱切りしてバターで炒め醤油で味付け。



ゆで卵

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キュウリの酢の物

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IMG_4221 - コピー IMG_4226_201807161859491b8.jpg  

キュウリはスライサーで薄切りして塩をふってもみ、30分以上置く。

ボールに酢大さじ2、レモン果汁大さじ1、醤油大さじ1弱、蜂蜜を入れて混ぜ、1分湯通しして冷水にとったチリメンを入れて浸す。塩分を水で洗い流し、水気をしぼったキュウリをボールに入れ、混ぜて出来上がり。

   
   


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在65才、農業歴29年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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