あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  香山末子さん(4)




唐辛子のある風景


私の古里は わら屋根ばかり

秋になると わら屋根に

真赤な唐辛子が干される

どの家の屋根も

秋空のもとに唐辛子が映えて

眼に痛い程だった

日本の屋根には

真赤な梅干が

かごに詰まって土用干しされている

私は発熱のたびに

あの赤い梅干を口にする

韓国のあの真赤な景色は

今どうなっているだろうか?

眼に浮んで消えない熱のある日










私の指と眼


わたしには カセットのふたを開けて

テープを入れる指がない。

ずうとずうと以前

わたしも指を持っていたのに、

四、五年前から、

指がなくなった。

外科にみんなあずけてある

眼も二十五年前

手術でとって

先生にあずけてある。

わたしが死んで

小さな箱に納まるその日

先生が

「香山さん、眼をかえすよ、

なんでもいっぱい見ることだ・・・」と言い

外科の看護婦さんは

「香山さん、指を返します

どうぞ何んでも自由にお使いなさいね・・・」

そういってくれるかな?

そういってくれるのを

わたしは

胸の中でしきりに願っている










忘れていた韓国


カセットテープに

喋りかけ 戻して聞く

忘れていたふるさと

韓国

韓国人ということを忘れていた

韓国人ということを思い出しても

すっかり忘れてしまった言葉

思い出さん国の言葉

発音だけにはまだ韓国が

そっくり残っている

みんなといっしょに

笑い喋って

私は

韓国を忘れていた

毎月二十日には

給与金 支払いの放送をする

そのつど

そのつど

すぐまた

韓国人を忘れ大きな顔をして

皆と一緒に

笑い 喋っている私


月に小遣いが八百四十円

淋しかった

けれど今では

みんなと同じ金額になりうれしい

山の病院で

心も 小さく丸まったようになり

悲しく淋しい時もあった

でも地震があっても壊れそうにない

あの立派な納骨堂に

皆と一緒に

私も納まることだろう



2030年 農業の旅→ranking


このページのトップへ

栗生楽泉園  香山末子さん(3)



私の誕生日


一月二十七日

電話が入って

ハイどうぞ

言ったとたんに

━━誕生日おめでとうございます

今日は香山さんの誕生日よ


東京の友だちの声

━━当の私が忘れていたのに

━━私は忘れないわよ━━ほほほ

忘れられない声が

電話の向こうで明るくした









私の心


四十九歳の時

訳もわからず書き始めて

二十年が過ぎた


夢見るほど気になっても

いい詩は書けない

今年こそ

来年こそはと思って月日が流れる


ほっと気持ちの休まる

詩を書いてみたいと願っている










妄導線今と昔


缶からに石ころ入れて

カンカンと杖で叩けば

カランカランと缶が鳴る

はるか向こうの

右へ曲ってるか

左へ曲っているか

缶からが教えてくれる

今は昔

妄導線はハイカラになって

音楽が流れ青空に響いて鳴る

つい音楽に聴きほれていると

道に迷って困る

ハイカラは

うっかりできない









お風呂


目が見えなくなってから

治療とお風呂に

やっと一人立ちできた頃

風呂に行くと

みんなが━━この頃はえらいな! とほめてくれる

絣のモンペは膝がうすくなって

下着が見えはじめた

上っぱりの襟は破れてきて

私が歩く調子に揺れている

━━頭は角刈りで威勢がいい と言われ

━━ちょっと座れや と言われて

私が座るとモンペの膝あてを縫ってくれる人

━━白くてもいいやな と襟も直してくれる

━━女っぷりが上がったぞ

━━ああいい女になった

と目の見えない私を相手に楽しんだ人々

みんな遠い昔のこと

今は私と同じ齢をとって

職員介助を受けている



2030年 農業の旅→ranking


このページのトップへ

タジン鍋

 
IMG_7604.jpg IMG_7606_2017092519181514c.jpg IMG_7610_20170925191816f6c.jpg

タジン鍋の下敷きにタマネギのスライスを入れ、ナス、ピーマン、パプリカ、オクラを適当に切って入れ、ベーコン3枚を半分に切って入れ、ニンニク醤油のニンニク2個を薄切りして入れ、ニンニク醤油で味付けし、胡椒をふり、煮立ったら極弱火にして20分、火を消して余熱5分で出来上がり。



2030年 農業の旅→ranking



このページのトップへ

栗生楽泉園  香山末子さん(2)


朝湯


朝の四時から五時が

私の入浴の時刻

やっと支度をととのえて

窓を開けて外を眺める

外はそよそよと風が吹いて

はるか遠くまで流れて行く

草の色や葉の恰好までが

みんな見えそうな感じ


ビニール袋を足に被せ

足首のところでゴム紐で止める

そんな苦労も

あの風にのってとんでいってしまったようだ










梅の花


なぜても感じのうすくなった私には

花など縁遠いものと思っていたら

耳鼻科の婦長さんが

新聞紙に包んだ大きな梅の枝を渡してくれた

私は匂いをかいで思わず唸ってしまった

「香山さん いい香りを嗅いだ時ぐらい 軽い声を出しなさい」

婦長さんの声ははずんでいる

しばらくして私は

去年梅の花と会わずじまいだったことを思い出す









朝焼け


男の付添さんが大きな声で

━━朝焼けだ━━

と教えてくれた

ぶっきらぼうないい方だけど

私の暗い気持がとんでいく


朝焼けの真赤な空の色

だが強い太陽が昇ると

消えてしまう

いつまでもつかまえて欲しい

今日の朝焼け


今日一日

昔見た朝焼けの色を思ってみる



2030年 農業の旅→ranking


このページのトップへ

栗生楽泉園  香山末子さん(1)



カラーテレビ


初めて東京から来てくれたお客さん

暫く話をしていたが

「香山さん、失礼な事聞いていいですか」

失礼な事聞いていいかと言われた時

私は男のことばしか言えず

俺が俺がと使っていることか

それとも、頭を刈り上げていることか

てっきりその話だろう

そう思い込んでしまった

「見えないのにどうしてカラーテレビが入っているの」

私の思っていた話と違って

チョッピリきまりが悪かった

「白黒の小さなテレビでもいいんでしょ」

盲人の耳は

耳と目の両方を兼ねている

カラーテレビは白黒テレビより

遥かに音がいい

離れたり、くっついたりの若い男女

熱がいっぱい燃え上がるドラマ

始まる時、終る時の音楽は

きれいで柔らかく、いい音

出て来るドラマの若い衆に

年も忘れ、盲人ということも忘れ

頭の中、胸の中で

昔を振り返って

最高にいいぞ

来たお客さんは

「へんな事聞いて馬鹿みたい、おれ本当馬鹿みたい」

そんなふうに云って帰っていった










暗い原稿


沢山な詩原稿を持って行って

一つくらいは合格するだろうと思っていたのに

━はい書き直し、と云われて帰る足どりは重い


やっとの思いで帰ったところへ

栗林先生が面会に来てくれた

私は先生に原稿を見て貰った

先生は何も言わずに他の話ばかり

やきもきしている私へ

帰りぎわ

━香山さん貴女は笑い声と大きな声が似合います━

━暗い詩は似合いません━

そう云って出て行ってしまった









面会


四十年ぶりに姪と再会した

「おばさーん」の一声で

何を喋っていいのかわからない

撫ぜてみると

背が高くてがっちりとした身体

姉さんに似て大きいね・・・

と言っても言葉が通じない

彼女が何か云っても私にわからない


私の指のない手を握って

泪をすすっていたが帰って行った

三つの時別れた彼女の姿が浮かんで

韓国の話や姉さんのこと

山ほど話があったのに

胸がいっぱいで言葉が出ない

言葉がわからない

私は一晩中眠らず闇に残された



2030年 農業の旅→ranking


このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カウンター

QRコード

QR

検索フォーム