白杖をはなれて野辺を一人来つ吾かく見えし恵みになきぬ
ひそやかに母を待つ間よ教会の夫人がたてし茶に和みつつ
血筋悪しと知られ婚家ゆ離縁されき母は吾をぞ胎りにつつ
離婚後の母は稼ぐと街へ出でぬ癩病む祖母に吾を託して
吾が生れて母の復縁かなひしに其の吾が体を癩むしばめる
癩吾の去りても忌まるる其の家に汝ら励みて医業を成しぬ
離りつつ見守り来たれる妹等の今母となり職持てりといふ
うとまれし時代は過ぎぬ癩園の個室に訪ひ来し客と夕餉す
癩吾の縁家にあるをも打あけて娶りしといふ従兄は明るし
肉身の訪ふこと稀なるこの園に学生君らこぞり来給ふ