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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  信原翠陽さん


詩がとてもわかりやすく、何回読んでも心に響く。特にこの3作品は時代の荒波を越えて残っていくだろう。


押入の中から


襖をあけて

押入れの中を覗くと

盲になった悲しみが

どっとこみ上げ

思わず咽喉から

逢えぬ我が子の名前が出る

三尺の押入れの中の

誰れにも冒されない安らかさに

口笛鳴らし

胸が弾めば

たまゆらの命は

病苦を超えて

幼い頃の明るさを呼ぶ

さぐり覚えの場所にある

僅かな荷物は

冷たくて

追われ来た日の淋しさが

残っているよ

来る所まで来

墜ちるところまで墜ちて

嘆くのは愚だ

怒るのは笑止だ

所詮くるしみの旅なれば

これっぽちになった荷物でも

盲いたことが終止符でも

いいんだ

私は此処から生き抜こう

別れて生きる子供の為に

湖底のような静かな

押入れの中から

私は新しく出発するんだ












外套を着れば



窓を打つこがらしに

さぐりながら着る外套は

頼もしいぬくみを持って

盲いた私を包んでくれる

戦乱の時

炎の中を逃げ廻り

発病した時

冷たい人の白眼視から

私をかばった外套よ

だけが知っている

小さい島で

癒えぬ病を養えば

総てのものは離れていくのに

外套の暖い事はどうだ

記憶の底にある母にも似て

やわらかい感触に

病み疲れた身体が暖まると

何んにも見えない悲しみを

吹きまくる真冬の風が

さらって行くよ

外套の胸をひきしめて

自らがあたたまらねば

何処にも暖かさのない孤独の旅だ

蛍のように

自らが燃えて飛ばなければ

何処にも光のない無限のやみだ

見えぬ眼で掻きさぐる

これからの新たな道に

久遠の光が照すまで

外套よ

島の寒さを防いでおくれ

















小包


附録のどっさりついた絵本を入れると

中身の貧しい小包は重たくなって

其処から子供達の歓声が聞える様だ

ただ生きていると云うだけの

只、親で有ると云うだけの自分だけれど

断ち切る事の出来ない骨肉の愛情と

打ち消す事の出来ない望郷の想いを

固く結わえた小包に秘めて送る

雪の故郷奥能登よ

別れて生きる親と子が呼び合うには

余りに大きく引離された間隔でも

盲いた事が悲しい闇の連続でも

私にはまだまだ命を支えるものがある

此の世の何処かに生きている親を信じて

成長して行く子供達のために

永らえる事が残された今の希いが

北陸のきびしい風雪に打たれても

やぶれぬ様に出来上った此の小包を

さあ一日も早く送ろうよ━━



信原翠陽さんの略歴
1954年頃、邑久光明園に在籍していた。入所前より詩作を趣味とし、地方の校歌の作詞に応募、入選の経歴を持つ。入所後は盲人会役員を務めた。詩のほかに短歌・エッセイなども発表。生没年、入園年は不詳である。楓短歌会『光明苑』(昭和28年)


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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