革靴と地下足袋の間には、まるで異次元の空気が流れている
時には革靴をはいて
時には地下足袋をはいて
両方を行ったり来たりできれば、人生がどんなに豊かになるだろう
初めて地下足袋をはいた朝、自分ではないような気がした
集落の人の目も必要以上に意識してしまった
けげんそうな目で見られると、なにか「社会から落ちこぼれたように」感じた
農業が「社会的階層の低い職業」とは思わなかったが
スタートの3ヶ月間が危機的だった。3ヶ月が過ぎた頃
周囲の目も気にならなくなり
田んぼの空気にも慣れ
土の感触にも慣れ
やっと足が地面に着いたような気がした
最初はけげんそうな目で見ても、「他人も」、「自分も」、状況に慣れてくるし、違和感を感じておれるほど、人生に誰もそんな余裕はないのだ
認めたくなくても、農業者であることを自他ともに認めざるをえない「形になった」、それが3ヶ月という期間だった
元々の農家なのに、革靴と地下足袋の間には、それくらい深い谷間があった
それほど「土から疎外」された状態だった
農業では食えないという先入観
人並みに立身出世を考えた青年時代、農業など想像もしなかった
転職を繰り返し、社会から脱落してしまった時、独立自営業の農業がひらめいたが、元々の農家だからひらめく潜在土壌もあった
都会では、転職を繰り返すと、真っ逆さまに落ちてしまう。正社員と非正社員の間のすさまじい格差社会。救ってくれる唯一の糸は「ベーシック・インカム(現役世代の年金)」しかない
ベーシック・インカムで、企業社会とは全く異次元の世界を生きるのだ。その人生は企業社会にとどまった人よりはるかに大きい実りと自負をもたらしてくれるだろう
今日はひなびた山村を歩いて
明日は大都会の裏通りを歩いて
田舎と都会を行ったり来たりするのが、近未来の目標の一つである
ほどほどの田舎だから、まだ熊は出ないし、イノシシやシカの密度も県北ほど高くない。
ほどほどの田舎で、駅周辺は岡山市内が通勤圏のベッドタウンになっているし、国道2号線がすぐそばを走っているし、海沿いにはブルーラインが走っている。こんな好条件だから、30分以内の距離に直売所が10ヶ所もある。
山村なら、害獣の密度は高いし、スーパーは近くにないし、野菜を出荷できる直売所も30分以上車を走らせる必要がある。
直売所を選ぶことができないなら、生産者には大きな不利である。
そして、出荷した野菜が全部売れるような直売所でないと、出荷するメリットは少ない。直売所に15~20%のマージンを取られるのだから、全部売れて6千円になっても、取り分は6千円×85%=5100円。
他に年会費が1~2千円取られる直売所もあるし、単価シールも1枚が1円取られる直売所もある。だから、売れ残るような直売所は避けた方がいい。スーパー内の「産直」が最もよく売れると思う。
今はたいていどこの大手スーパーでも産直コーナーがあるので、何ヶ所か尋ねて見たらいいと思う。
今日は曇天で「定植びより」だったので、出荷が終わった午後から、サニーレタスと株張りシュンギクの定植をした。ワンパック宅配だけの時は、顧客数以上は不必要なので、定植数を逐次数えて植えていたが、直売所と並行出荷するようになってからは、植えれるだけ植えている。
JAの直売所、民間の直売所、スーパー内の産直コーナー等、いろんな形の直売所ができたのは、ここ5年ほどのことである。それまでは直売所などなかった。だからワンパック宅配(セット野菜の宅配)をするしかなかった。
「市場出荷」や「農協出荷」はする気はなかった。サイズや重量等の規格が決められ、しかも外観が要求される野菜など、とても生産できる自信はなかったので、就農準備期間中にワンパック宅配にしようと決めた。
(個人のセット野菜)・・・軽四で団地を引き売りしながら、セット野菜を購入してくれる家を探した。県外は、最初は友人や知人に依頼したが、その後は口コミで増えていった。
(業務用の野菜とハーブ)・・・電話帳を見て(当時はネットなどなかったから)、電話営業をした。
直売所への主な出荷野菜
(11月)レタス、シュンギク
(12月)レタス、シュンギク、
(4月)ナバナ
※レタスとシュンギクは霜に弱いので1月中旬頃までしか出荷できない。
※雪白体菜(シャクシナ)はアブラナ科の中でも特に虫害が多いので来年はやめる。
※ホウレンソウとサラダミズナはあまり得意でないのでやめる予定だが、ワンパック宅配に必要な量だけは作る。
※止める野菜の代わりに来年はチンゲンサイを加えようと思う。
※定植なら、4~5株で120円のホウレンソウやサラダミズナより、1株で120円になるレタスやシュンギクの方が有利。