あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  谺 雄二さん(4)




夜はまだ明けぬ


ライを病んだその日いらい

ボクが生まれ育った筈の場所とボクの名前は

地図や家系図からかき消されて

まったくあとかたもない

しかし夢のおくに幽かに残る

おぼろげな記憶をたどれば

そこには石段のある草立ちの堤防

堤防の上はずーっとどこまでもつづく遠い道

川にはポンポン船の白い航跡

その堤防下の小さなお宮の境内で

いっしょに遊んだ近所の子は

たしか男の子がカズオ

女の子はヨシエと呼んだ

そしてボクの名は?


かならず記憶はここでとぎれ

黒い断面があらわれる

ハハはライを病んで死んだが

はたしてハハにふるさとはあったのだろうか

この尾根に今夜も雪は降りしきり

療舎の灯々は地獄谷への暗い傾斜にあえぐ

ハハもまた墓には眠らず

雪降るどこかの街をさまよっていないか


   ━━あるいは時に

   死んだハハの愛撫の手に抱かれている

   いとしい息子よ

   わたしはおまえを離しはしない!

   けれどハハよ

   その手の中であなたの息子は哭く

   もうたくさんです

   これ以上ボクを愛さないでください!

   息子はついにハハを拒絶しえたか

   拒絶することで回復しえたか

   ライの死の揺籃はゆれて━━


みるがいい

いまも祖国を犯す意図と

そこに繋がる徒者の眼とが

ライ病む者にふるさとを失わさせ

それらはまた自らの闇をふかめることで

ライ病む者の本名をも削りとらせてやまぬ

こんにち医学はライを治癒させている

だのになぜボクたちは

日本山脈の奥処 この熊笹の尾根に

ひっそりと身をひそめねばならぬのか

まして死してなお行方をしらず

いつの日鎮まるあてもなく

さまよい傷みつづける

ライの死たちよ!


夜はまだ明けぬ

ああ 夜はまだ明けぬ










朝明け


新薬プロミンの出現→プロミン獲得闘争→治療の本格化、そして八年、漸くその効果顕著にあらわる。1956年、東京・多摩全生園に於いて行われた臨床調査に依れば、入所者の約90パーセントが治癒・無菌状態にあり、しかもそのうちの60~70パーセントが社会復帰可能者であるという。かくして同年われわれ患者の”病後施設”問題起る。この詩は、「勇気をもって社会復帰せよ!」の呼びかけに応えたものである。
━━1957年元旦━━





かがり火に

去年の帽子は抛り込め!

もうすぐ夜が明ける

おれたちの額が、すっばらしい曙光の色に染まるのは

あとひと時の そうだとも ちょいの間のこった


しかし永かったぜ ながかったなあ

おれたち鬼の顔の歴史

踏んまえているこの広場は

日本の冬の最後の結晶


どんと かがり火を焚け!

おれたちの顔の中の

氷河は

もうすぐ亀裂する 亀裂したら

ぶっかませろ

砕け‼



一番鶏のトキ






ふぶきだ!

四方の山々をどよもし

この尾根に 雄叫び

つっ走るふぶきだ

北嶺を越え

一気に谿を駈けあがって来た斬新な殺意!

━━新しい年はすでに明けた

ここ栗生ヶ尾根に住む

おれたち病者一千の

希望の朝明けに相応しく

このふぶき この殺意

まやかしの うっとうしい平和の夢は

千切れとべ!

偏見と迷信の 汚濁の歴史の

らいの鬼の顔よ砕けろ‼

病友とも

いまこそ破壊のとき

この尾根の 古きもの一切が崩解るときだ

怯えるな病友よ

死滅するのはらい菌のみ!

ふぶけ 新時代の意志

おれたちの素顔をあらわにする

今朝のふぶきよ‼




2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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