あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  高橋晴緒さん(2)



癩夫婦


六部屋つづきの四畳半の一部屋

六十ワットの電灯の下で

男は机に向って本を読んでいる

女は癩園の限られた収入のなかから買いもとめた新柄のセルを縫っている


時折り男のめくる紙の音と

女のよりをもどす糸をはじく音が

部屋の中に音するだけだが

二人の抒情があたたかく部屋の中に満ちていた

外には小さな風が出たのか角の盲導鈴がチンチンと鈍くなって夜の静けさを深めてゆく


男は知っていた

女には子供のあることを

そして生理のように

そっとブレストの痛みの哀しさを抱くことをも


女は知っていた

男の絶ちがたい杳いひとへの愛着を

癩者という自負の排泄をどこに苦しみもとめていることをも


宿命のなかに自らもとめ倖せを希っている二人には

小さな波風があってもそうしたことを口にしなかった

今夜も

男と女の 二人の抒情は

六十ワットの電灯の下に

あたたかく満ちていた










自画像へのサイン


<僕のかつての相貌 かつての名よ>


僕の身辺にあるあなたたちは

誰れ一人僕を知らない

そして

僕もあなたたちの過去を知らない

でもおたがいの人生を信じあって

僕達は今日を生きている

だから僕は僕の醜貌をせめない


とおき友たちよ

君たちと歩いた理想の道に

僕の歩行は続かなかった

そして君たちの知らない道を

僕はひとり歩いて来た


いま 君たちの知らない地で

僕が思考虚無にあえぎ疲れているとき

はるかなる君たちは何を考え

何をしているだろう


<僕のかつての相貌 かつての名よ>


いまは愛惜悔恨という言葉さえ

言葉のカリカチュアーにすぎない


君たちは

僕を‼ 知らない

あなたたちも

僕を‼ 知らない


だから僕は僕の自画像へ戸籍にない

もう一つの偽名なまえを著名するのです

それがいまの僕にふさわしい名前だから




2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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