あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  中島栄一さん(1)

 

足を断って二十年


二十年前の今日

あのおそろしい大手術に

おれの足は断ち落された

背骨の脇に大きな

麻酔薬の注射がうち込まれた

刻々と迫る悲しみ

無心に時計が時をきざむ

全身がふるえる

手術台のまわりに光る

不気味に並んでいる

メス、鋸、数々の器具


看護婦が静かに

がまんしてねと体をしっかり

おさえる

では始めますと

医師

足もいよいよ最後だ

骨を引く鋸の音

ついに三キロの目方の骨と肉が

おれの体から永久に離れた

三時間のうちに手術が終った

風船のように軽く感じた足

丸太棒のようになって横たわる人間おれ


粘りついた汗が

ベットに沁みとおるほど出た

もうすべてあきらめた

泣けるだけ泣いた

そして今思う

あの大戦争だ

おれの足も戦争がなければ

切らずにすんだ

無理をした無理をした

毎日のように山へ行き

薪を取った畑も耕した

手足から血を流して

良い薬がない、手当がない

もうふたたび戻らない足に

大声で呼ぶ

かえってこいおれの足

だれのための戦争










手の指が欲しい


嘆いても

戻るまい

恐ろしいらい菌に噛み切られた指

でも

どこかであの指が

泣き叫んでいるようだ

血だらけになって

骨に抱かれて。

そうだ

探してみようさがせるだけ

呼べば帰るだろう

親からいただいた

貴い指

ああ働いてくれた指がかわいそう

社会が待っている

大声で呼んでいる

心は走っている

ハンドルを社会に向けて

整形した、拾い集めた、指でもよい

希望を掘るのだ

指がほしいこぶしのさきに。
 









ゴム靴に


おれは変形した足に

ゴム靴を履かせて

ずるこずるこ歩く

悲しそうに靴は泣く


らいの傷足に繃帯して

びっこを引いて

松葉杖にすがって

乞食のように


だがおれは

このゴム靴でないと

一歩も歩けないのだ

なお弱視のおれは

舌先でゴム靴を

舐めてさぐって履く


こんな不潔な動作は

誰にも見せたくない

社会の人はなんと

思うだろう

いやこんな愚痴は

やめよう


お前に願いがある

びっくりするなよ

おれはお前と

近いうちに郷里へ

里帰りする

ゆるしが出たよ


その時はいっしょにたのむ

お前を磨いてやる

郷里の土は温かいか

冷たいかよく踏みつけてくれ

三十年の古里の土を



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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