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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  桜井哲夫さん(6)


ー1992・8・25 竜飛岬にて

風の造形


山の療養所から五十年ぶりに帰った故郷

津軽には遠い日の津軽はなかった

車のドアが開かれた

一千㎞の旅を看取ってくれた

二十四歳の中林和子と

竜飛岬の風中に立つ

津軽の海に今生まれたばかりの風は

和子のジーパンの裾を翻し

髪をなぶって真っ直ぐに空に昇る

津軽の潮騒

風立つ音、潮の香

たしかに聞いたのです、嗅いだのです

おふくろの子宮の羊水に揺れながら聞いていたの
だと思う


その日のおふくろは竜飛岬に親父と

それとも村の女房達と来たのだろうか

私は知らない

知らないはずの耳底に残っている津軽の潮騒を

今聞いたのです、今知ったのです


風が吹きます、風が立ちます

東北電力の風力発電所の風車が回ります

竜飛岬の風に昨日はない

竜飛岬の風に明日もない

竜飛岬の風は今生まれて今吹くのです

竜飛岬の風の造形の只中に

私は中林和子の腕に支えられて

今を立っています
 








冬の手紙


白根おろしがやんだ

花びらを散らしたような雪が

寮の庭を染める

雪は手紙

病室の電灯に津軽の友からの手紙を読んでもらう


友は毎月のように故郷の便りを送り続けてくれる

職場のこと

津軽の季節もいっしょに

手紙の行間に鱈のじゃっぱ汁の匂いがしたり

津軽三味線の音が聞こえたり

雪は津軽の便りを運ぶ


両親が死んで三十年

八十歳を過ぎた兄からの手紙は

年に一度の年賀状

リューマチを患う友は津軽の冬は辛いと言う

雪の手紙を読んでもらうたびに

俺の指のない手が

補装具をつけた細い足が

ギシギシいたむ









一人ごっこ


春の宵の病室

貝殻二つ耳にあてる

目を閉じると

遠い津軽の海鳴りが聞こえる

十七歳の

春の津軽の海鳴りが聞こえる

砂山に肩を並べて聞いた海鳴りだ

波頭をかすめて鳴く

ゴメの声も聞こえてくる

一人

春の宵の一人ごっこをしていると

胸が騒ぐよ


(註 ゴメは、カモメ)




2030年 農業の旅→ranking



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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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