あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

多摩全生園  北條民雄さん



二つの死


  秋になったせいだろう。この頃どうも死んで行った友人を思い出していけない。それも彼が生前元気にやっていた頃の思い出ならばまだ救われるところもあるのだが、浮んで来るのは彼の死様ばかりで、まるで取り憑かれてでもいるかのような具合である。夜など、床に就いて眼をつぶっていると、幻影のように、呼吸のきれかかった彼の顔が浮き上がる。眉毛のない顔がどす黒く、というよりもむしろどす蒼く変色して、おまけに骨と皮ばかりに痩せこけて、さながら骸骨、生ける屍とはこれだ、と思わせられるようなのが、眼の前でもがくようにうごめき始めるのだ。それから湯灌してやった時に触れた、まだなまぬくい屍体の手触り、呼吸の切れるちょっと前に二三度ギロリとひんむいた巨大な目玉、呻き、そんなのばかりがごちゃごちゃと思い出されて来るのだから全く堪らない。昨夜の如きは遂に一睡もしないでその幻想に悩まされて明かしてしまった。そのため今日は頭がふらふらし、雑文でも綴るより仕方がない。が、おかげで詩のような文句を考え出した。
粗い壁。
壁に鼻ぶちつけて
深夜━
あぶが羽ばたいている。

 友人に見せたら、ふうむ、詩みたいだ、と言った。題は「虻」とするよりも私はむしろ「壁」にしたい。まあこれが詩になってるかどうかはこの場合どうでもよいとして、昨夜一晩私は壁を突き抜ける方法を考えたのだ。しかし突き抜けることが不可能としても、虻は死ぬまで羽ばたくより他、なんともしようはないのである。
(未完)


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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