あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

多摩全生園  国満静志さん(4)



ゆすら梅の実は紅く



霧の中から

女の人が青いねぎを一抱えして歩いて出て来る


それは泥で汚れているのだが

白い茎は太く匂いが漂っている

そうして幾条もの茎は実に瑞々しく

雫が青い琉璃のように落ちていた


女の人の歩いて来る背に

田圃の広がりがあり

山があり川があり

そして ゆすら梅の木があり

その梢にたわわな実が弾けるように

子供達の声がこだまとなって響交ひびきこうていた


ああ 女の人は

その暮しの総てを一杯背に乗せて

薄明の霧の中から歩み出て来る

そして日灼けした腕の中に一杯葱を抱いている

その一抱えの葱は如何にも重く

それを町で替えて得られる金は幾何いくばく


ああ 女の人が

暮しの哀しみと嘆きの重い荷を背に載せて

私の前を歩いて行く時

背負い切れなかった人生の重い荷の下に

這いつくばって亡くなってしまったような 母を思い出して

私は泪ぐんでいる


田圃の霧の中から濡れた葱を抱えて

女の人は出てくる・・・

そうして嘆きや悲しみの沁みていた人生の

日々の地図の上を踏んで鰯雲のひとつひとつに

夕映えの滲んでいた空の下を前に向いて

葱を一杯抱えた女の人は町の方へ消えてゆく


ゆすら梅の実は紅く

そうして子供達の声が響いている











細々と

常にその径はあった

あるときには

木々に縁どられた

林のほとりを

ひと筋の

流れのように

その径はあった

あるときには私は

その細々とつづいていた径の涯に

深くたたえた湖水のように

澄んだ空をみていた


人と人とは

常に別々なのだろうか

径のうえに逢い

そして別れた

ちりしく落葉の径

落葉を吹きよせていた風に

一枚の紙のように

肩や背をはたかれ辿ってゆく

━━径

ひと筋の細々とした径だけが

人と

人との間を

清冽に

水のように

愛と

背信の日々を流れた



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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