あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

多摩全生園  松井秀夜さん



病歴



母の絶間ない懊悩と苦銀に

母の絶間ない歌声と揺籃に

この小さい肉体はのびあがってきたのだ

この小さい生命は燃えあがってきたのだ

そしてこの私を━━

母はどんなに微笑ましく凝視めていたことだろう。


だが、宿命は虚しくも裏切ってしまった

この小さな肉体に与えられた力も

この小さな生命に描かれた幸いも

母の微笑も凡て絶望の闇に消失せて

淡い燈の下で 幾度吐息し

暗い闇の中で 幾度嗚咽したか、


寂寞とした幾年は流れて

日毎、潰れゆく己が肉体を撫でつつ、

孤独ながら 彼の追憶の歌を口吟み、

私の生活が続けられる。


この療舎で仰ぐ

茜雲は 杳く誰をか呼ばり

その風情がこよなく愛しい、

遠く 彼方に━━

暫く晩炊の手を休めて

母も必ず仰ぐことであろう。

ああ、夏の日、赫耀と燃える陽光に

挑み合ふ 生命があり、

瞬き散る 星座の中に

ほそぼそと 欷く光がある。


この宇宙の真性を 私は

尊厳な気持で 凝視するのだ。



松井秀夜さんの略歴
1921年9月1日高知県に生まれる。1934年9月20日全生病院に入院。小説、詩を作る。1945年1月30日死去。小説は一編が『ハンセン病に咲いた花 戦前編』(2002 暁星社)に収録されている。

2030年 農業の旅→ranking
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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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