あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

多摩全生園  後藤暁風さん



野路の旅



はりさけむ痛苦を胸に秘めて

絶えなむ玉の緒の、慟哭にふるへつつ、

一人とぼとぼ野路を歩く。

灰色の旅路を。

おおこの寂寞。悲痛、哀愁よ。

誰と共に語り、何をか記さむ。


叢に沈みて白き、一本の百合、おお野百合よ

お前は誰がために、かく優しくも、

装ひを凝らしたのか、唯幾分時、

俺に見せる為か、ソロモン極盛の、

時でさえ、及ばざりしてふ、この装ひを。


無始の闇黒に、根をおろして、

無窮の幽界に、消ゆるまでの幾日

唯幾日の栄華とも知らずにか、

儚きは姿、いとちひさき刹那の生命よ。

されどされど、おお野百合よ。


お前がここに、現存するまでには、如何に、

永劫不断の努力と準備とが、暗黙の間、

刻々と費されて来たことか━━そしてお前の、

この姿、匂ひ、気高さ━━ 一切は、なんといふ完全さにまで、

おお、驚異すべき生の一滴よ。


送りいでし生命の、噴焔勇躍、伸展完成、

やがて大飛躍、つぎの新生命へ、蜂までが、

お前を助けているのだもの、俺はもう

言ひ知れぬ、無限の、懐かしさを、憶ふよ、

おお偉大なる生の力。愛、愛、愛、


俺も無意味の、存在ではない。

道はただ白い━━永遠につづいて、

俺は歩かねばならない、勇敢にましぐらに、

火のついたこの体が、もえつきるまで。

悲哀のどん底に流るる、生の真実を索めて。



後藤暁風さんの略歴
全生病院に在籍していたと思われるが、後藤暁風はペンネームと見られ、詳細は不明である。1935年刊行の『野の家族』には故人とある。


2030年 農業の旅→ranking

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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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