妻とわれ音と匂ひにたよりつつ干鱈ひとつ焼き上げにけり
どちらかが見ゆれば消ゆる憎しみか妻も噛みしむるらしき沈黙
妻のため耳傾けて熱したる鍋に油をしたたらせをり
待ちわびし個室に移りはやばやと盥に妻の背を流しやる
盲夫婦われらが部屋内の往き来にも手を打ちて位置知らせあふなり
匂ふがにしなやかさ持つは何の落葉さぐりひろぐる掌の上
点筆をくくり持ち妻の書きし随筆入選と今日知らさるる
点字書の
逢ひたしと送りし手紙数知れず母を苦しめき二十二年よ
Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
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