あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  千葉 修さん


長島八景


二 小豆暮雪

(2ページです)

 長島を吹き渡る風が西に変り、気温がぐんぐん降下し始める頃から、真向いの小豆島がだんだん近く、鮮かに見えて来る。観測所の露台から、向うの小豆島の山の襞もはっきり見え、あか土の地肌がそれと見分けられるようになると、もうすっかり冬で、海の色から冬は来るのかと思うばかりにあおぐろく沈みきった入海をへだてて、長島の延長ででもあるかのように思われて来る。小豆島まで五里と言われ、或いはもっと近いともいわれているが、その島の襞々に、頂上に、真白い雪が幾日もつづけて見られる頃には、五里はおろか、まったく距離感がないまでになる。
 長島で雪の降るのは珍らしく、観測日誌に雪を記録する日はあっても、その大半は飛雪で、殆ど積雪にも降水にもならない。まれに、降りしきる雪に目が覚めて気づく時はあっても、その頃にはすでに解けはじめている状態である。しかし、小豆島の頂上と襞々の雪は、こんな時でも一週間も十日も消えない。長島から小豆島を見ていると、西北面の故でもあろうが、さすがに長島は暖いな、という気がする。小豆島は、長島の何処からでも眺められ、四季の移りも実にはっきりしていて、いつの場合でも、私たちのいい文芸素材になって呉れている。
 紅葉の名所寒霞渓はあの辺だ、四国遍路の時はあの雪の峠を越えたものだ、などと語り会う誰彼の懐旧談も、もう聞き古した。小豆島はこのように、絶えず私どもの無聊を慰めて呉れるが、その頂上一帯に雪の消えない日の、没際の夕日にほんの一瞬燦ときらめく時ほど、魅力ある光景はない。ちょうどその頃、私は十八時の観測の時なので、日照紙を取換え、空の雲行をしばらく観察しながら、 むかうともなく対う小豆島の雪の照り返しを、これで十年近くも賞でて来ているのである。風のすっかり落ちた露台の冷えに耐えながら、見る見る漁船の灯がちらつきはじめるまで、見とれているのである。
 その頃、小豆島の雪は薄くれないから、また、もとの白さにかえって、黝い入江の海をいやが上にも暗くするのである。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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