あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  千葉 修さん


長島八景

七 屋島帰帆

(1ページ半です)
題名は「屋島」となっているが「家島」であり、「やしま」と読む。

 楯岩を仰ぐ岩に坐って、真東に位置して見える島が家島である。そこらあたりには形も似通った大小の島々が点在していて、この家島をそれと知るまでに私は数年もかかった。それだけに忘れ難い島の一つである。風の凪いだ日など、光の屈折と反射の関係で、この家島が海上にポンと浮き上がって、まるで、宙に浮いたように見える時がある。
 虫明から、日生から、一日の漁に出た白帆の群が、家島をめぐる海上に、如何にも内海といった感じで、無数に見える。私が楯崎に遊んだ日の日暮れには、ポンポンと威勢のいいエンジン音を響かせながら相次ぐ漁船が、家島沖から帰帆するのに必ず出遭う。濡れた漁網を帆柱に、舷に拡げながらわが家へ帰る漁夫らの顔が、一日の疲れをありありと見せて、私のすぐ近くを過ぎて行く。
 家島沖に白帆を輝かせながら悠々と散在しているのを眺める時もそうだが、暗くなった海上を帰りを急ぐエンジンの威勢のいい音が相次ぐ時ほど心の洗わるる思いをすることはない。その船と船が互いに呼び交わしながら、一日の労をいたわり合う声が、岸辺の私にもはっきり聞こえる。私はこの声に急に親しみを感じほっとする。そして漁夫の生活のこの悠長な面を憧れたりするのである。
 家島沖に白帆が全く見えなくなり、狭いこの楯崎の港口に、エンジンの音もしずまりかえる頃、私はやおら家路を辿るのだが、これで島住まいにも馴れきったな、という感慨を覚えて、今は遠く響く山陽線の汽車の汽笛を聞きながら、私などよりも寂しく遣る瀬無く、もっと不自由であろう家島付近の島々に、しばし目をやって、去り難いのである。それほど、帰帆の影の全くない海上の静寂は、ややもすれば現実の私を夢幻の世界へ惹き入れるのである。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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