あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  千葉 修さん



長島八景

五 楯埼晴嵐
(2ページです)

 長島の東端は、奇岩怪岩が突兀としていて、緑の島の異風景の一部を成している。楯崎はそこに在って、私たちは属に”楯”と呼んでいる。文字通り楯の形をした大岩が一枚、岬を一歩抽ぬきんでて屏風のように突立って居るからである。長島をめぐる入江が殆ど凪いで、湖水のような時でも、外海に向かうこの楯崎には、海といった感じの波の絶える間がない。

 この楯岩も、島に来ていち早く聞かされる景勝の一つで、足に自信のない者までが、相愛の磯づたいに、稲荷の白浜を越えて、この楯岩の奇観をたいていは目撃しているのである。四月三日の草餅、春分秋分の牡丹餅、花見の弁当を貰った日などには、一日の行楽にうってつけのコースなので、私はたいていこの楯崎に来る。広い外海の風をじかに浴びながら、この楯岩を真正面に仰ぐと、コセコセした日常の煩瑣から、いちどきに解放されてしまう。沖を航く船の音までが男性的な響きをもっていて快い。楯岩を前に、平滑な岩に腰を下ろし、遥かに霞む淡路島、鹿久居島、すぐ目の前の青い家島、頭島などに目をやって、瀬戸内海の景観を一望におさめ得た時には、弁当の味もひとしおである。よく見ると、楯岩のひびから小松が数本生えている。小さな松ながら、節暮れ立っていて、十数年も、いや数十年も経ったのだということが首肯できる。今年の春、その松の中の大きいのが一本枯れかけて来たのを発見した。土の気の全然ないこの岩に、しがみつかんばかりに生えたこの松の命すら、松喰虫は無慚にも奪おうとしているのだ。
 私が果樹園通いをしていた頃のある日、無用の手漕ぎ舟を北海岸から南海岸に回航する必要があって、Mと二人してこの楯崎を迂回したことがある。風はしずかで、入江はいつになく凪いだ昏れ方だったので、明るいうちには炊事裏桟橋まで行ける自信をもって日出桟橋を出た。が、稲荷岬の沖にさしかかった頃から風のあることを感じた。楯岩の見えるあたりからは、そうとう風が強く、櫓を押せども押せども前進はおろか、櫓網も危ないと思うばかりになった。だからと言って今更引き返す訳にも行かず、一進一退を続けながら、強引に、やっとの思いでこの岬を越えたのであった。あれ以来、この楯岬に来るたびに当時の苦い経験を思い出しては、楯崎晴嵐むべなるかなと思わざるを得ないのである。



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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