あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  千葉 修さん



長島八景

四 玉葛夕照
(1ページ半です)
 
 長島から真西、岡山の方に備前富士といわれる玉葛山が聳えている。没日の空を背景に、ちょうど逆光に浮彫されたかのようなときの玉葛が殊の外美しい。夕べの茜も失せて、橙色もいよいよ淡くなりかける頃の空の余光は、玉葛の後光かと思うばかりである。
 夏の堪え難い炎暑に喘ぎ喘ぎやっと凌ぎ得た一日の昏れ方、露台に上って夕涼を愉しむ頃の玉葛の、徐々に黝ずんで行く雄姿に向いながら、私は救いの一刻を満喫する。夜鷹が鳴き続けるのもその頃で、すっかり暮色に包まれた東天からこの玉葛の夕照に向って、さも空の残照に憧れてでもいるように鳴きわたる。夏に弱い私は、こうして年々玉葛の夕照の刻を待ち焦がれては露台に涼み涼み、やっと夏を凌いではすでに幾年かを送った。
 秋ともなれば、短日の白い余光も消えようとして、玉葛の頭上を吹き越えて来るのではないかと思う方向から襟元に沁む夕風が爽やかに渡って来る。私が露台に座りこむ時間もだんだんに短くなって、玉葛も夏ほどには私を魅了してくれなくなる。しかし、山の輪郭も稜線も実に鮮明に、澄み切った大気の中に浮き上がって来る。その頃には、ねぐらへ急ぐ百舌もずが、これまた玉葛の夕照に向って啼声とともに飛翔して行くのをよく見かける。太陽がちょうど玉葛の真上あたりに没する頃には、翳りの早い島の入江には、玉葛の投影ではないかと思うばかりの部厚い翳が、急にのしかかって来る。と思う間に、わが島はすっかり暮れて、僅かに黄ばんだ余光が、玉葛の真上の空を染めている。
 私たち愛用の連絡船”玉葛”の名も、けっして故なしとしないと、この時ほど感を深くすることはない。



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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