あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園(邑久高校新良田教室) 村上はるえさん



彼と私


こおろぎが浅いくさむらの

日の光がちらちら漏れるところで

しずかに鳴いていた

私はそっとくさむらに近づいて

こおろぎを捕えようと思った


こおろぎはよく鳴き立っていて

ともすれば自分だけの世界のように

深い大空にまで

響きわたるような声で


私は自分の手をそっとくさむらに近づけた

だんだん近づいて

こおろぎの羽根の振動が指さきに感じるところまでゆくと

その瞬間自分の手が妙に醜く

いためる手につやのないことや美のないことをつくづく感じた


くさむらの内部はしんとして

こおろぎの黒い目だけが光っている

その目は鋭く

自らのうちにあこがれを宿して

幸福の限りをつくしているかのように四枚の羽根でうたっているのだ


そしてそれを鋭くみつめている自分を

この上なく醜く感じた

決していま自分の相貌に美のないことを

小さな欲望を充たしたい心を

ありありと感じた


くさむらの内部はしずかだった

日の光はぜいたくなほど注がれている

すべてが彼のうたうのに適している

微風さえ彼をさまたげない


私は心にいやなものを感じた

自分の心のさびしさ 貧困さ はずかしさを感じて

私はだんだん手をひいた


私は音をさせないように

後ずさりにくさむらをはなれた

そしてこれからも決して彼を

捕えまいと思った

そのあとも彼はやはりうたった


こがね色をした羽根に反射する光さえ

自然らしい極めて調和のとれたもののように思えた


村上はるえさんの略歴
1939年熊本県に生まれる。高校1年の2学期修了後、1955年1月5日菊池恵楓園に入所。翌年四月邑久高校新良田教室に入学、同校卒業後、1961年に退所。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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