あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  豊田志津雄(庸沢 陵)さん



私の窓近くに


M子よ

その花模様の筆入れの中に

その鉛筆の芯の中に

そのクレヨンの色の中に

おれが潜んでいる事を知ってはいないだろう


M子よ

おれにとっては初めての姪であるおまえだ

なんでおまえの入学を無視できよう

おまえの母さんが数日

ひそかに

おまえより離れていたことをおぼえているか

二年前のことだ

その時 持たせてやった

入学祝いのそれらの贈り物に

儚い満足をおぼえたおれだ

おまえの母さんは

きっと

━━はい おみやげ・・・と

それだけ言って渡したことだろう

おまえは その時

母さんの表情の中に

━━Mちゃん しっかり勉強を・・・と

もうひとつの知らない人の表情が重なっていたことに

気が付かなかっただろうか


おまえの成長は

そのたびに送ってくる写真に身近さを感じるおれ

そのあどけない

その顔・・・

ただ

その可愛い掌に受取っただけにすぎない

おれの贈り物


M子よ

その筆入れの中に

その鉛筆の芯の中に

そのクレヨンの七色の中に 何時も

おれという知らない人の

生きていることを忘れないでくれ









孤独の壁


この文字を刻ませたのは━━誰

この裸体を彫らせたのは━━誰

この壁いっぱいの 文字と絵は

暗い一時代の歴史


この小さな入り口の

この重くるしく軋む扉の音に

怯えた眼があり

うつろな眼がある

この黴臭い 湿った部屋で

この煤けた壁の 囲いの中で

自己の存在を反すうし

思考に耽ける日 日


この冷めたい

この部屋に

松の木を切って繋がれた人

危篤━━死亡

その 便りを手にして

願いでた帰省も背を向けられ

やむなく

この島を

密かにはなれ閉じこめられた人

それら

罪ほどでもないものを

罪として

やむなく蹲っていた 多くの人


背伸びをしてもとどきそうもない

格子のはまった小さな窓から

今日

午後の陽が斜めに走り

この浮き出た壁の一面に

そっと手をふれると

この壁の文字の中から

閉ざされた者達の絶叫と呻き声が生まれ

孤独の顔が

一つ

また

一つ

浮かんでは消える


(注)どこの療養所にも「監獄」があり、規則に従わない者や違反した者は療養所内の「特別法廷」で裁かれ、入れられた。長島愛生園では戦後の昭和28年まで存続した。


2030年 農業の旅→ranking


このページのトップへ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

カウンター

QRコード

QR

検索フォーム