あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  豊田志津雄(庸沢 陵)さん






鎖につながれる

それが

当然のような顔をしている おまえ

三度の食事を

うすぎたない椀に盛られて

腰のまがった爺いさんが持ってくると

必要以上に尻尾を振り

きまってすっかりたいらげる おまえ


頑丈な鎖につながれて

うれしいのか

仕方がないのか

朝の散歩に爺いさんを引きずっていく

それも

食事をくれる義理か


陽が高く昇る頃

玄関の脇の地べたに寝そべって

物音がしても起きようともせず

聞きなれぬ声がしても吠えようともせず

むなしい時間を過す

それが

おまえの日課


夕方

今日はおまえの誕生日・・・と

大きな尾頭付きを提げて爺いさんがやってくると

鎖の音があたりにひろがって

脚をあげ

尻尾を振って

お世辞を振りまく  おまえ


やがて

おまえの夜がやってきても吠えることも知らず

牙をむくほどの知恵もなく

鎖を切って自分の時間を楽しむ利口さもなく

飼いならされて麻痺したのかおまえの神経

ただ

爺いさんの臭いを嗅いで

二十四時間を生きている おまえ










ある旅人の譜


おまえの墓標は この島に

そう

誰かが言った 遠い記憶

そんなことが・・・と

いいきった おれは十九


あの

長い時間

でこぼこの道を車にゆられ

着いた漁村の 油くさい渚に立って

あの島に・・・と言われても

不安もなく

かなしみも湧かず

ただ

旅をしているに似てそう思っていた おれ


これから どうなっていくのか

これから どんな生活にはいるのか

その知識もなく

それを知ろうとする 思考力も湧かないまま

やっと着いた島

その

こわれかかった桟橋に立ってふりかえると

離れさったはずの故郷は意識のなかに近く存在し

桟橋を打つ飛沫の中に

航跡の泡の中に

きのうまでの出来ごとが浮遊する

はじめての風景の中で自分の位置をみつめた

その日

あれから二十数年

今日

古い手紙のひと束を手にとると

その

消えかかった日付のなかに

整理しきれぬまま終った おれの記録があり

なすこともなく過ぎた

光と影の交錯する時間があり

いつか

消えかかった おれの足跡がいっぱい

この島に印されてもいた



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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