さりげなく笑ひゐたりき昨日まで毒呑む女と思はざりしが
病み妻の睡りに落ちし息かそか夜に入りて外に風過ぐる音
癩短歌世にしろしめて大きなる海人もすでに気管孔うがてり
扉ひとえ境界に聞こゆ木槌のおと友敬吉は頭を
お母さんと寄れど涙も出しまさぬ気丈な母と夢にあひにけり
蚊をうちしわが掌のひびき空虚なり身にしみじみと夜の気は冷ゆ
雀といへ吾と仲よしが死にしかば今日はもの言はずこのまま居りたし
山風のいたぶりにして笹百合の花がみづからの花粉によごれり
けじめなき吾の不安に響き来て刃物のごとき冬の風鳴り
Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
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