あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  山川きよしさん






松を鳴らす風が落ちて

うみの向う側から

かすかな足音が近づいてくる

カーテンを繰って

曇った硝子を拭い

眸を凝らすと

松の梢に父が居た

桜並木に母が居た


半白髪をふりたて

煙草のやにが黄色く沁みた指先で

頁を繰り乍ら聞かせてくれた

遠い国の物語


夕食の後片づけを済ませ

温めた膏薬の匂いに

小さな幸せを嗅ぎとって

ぽつりぽつりと唄い出した

浦島太郎


耳をすませば聞えてくる

松の梢の父の声

桜並木の母の声

帰える途を忘れてしまった

思い出が

雪の明かりに

ぼんやりと夢の世界を描いていた









露(Bちゃん)


しばらくして失せていく

生命

庭の柿の葉裏に宿って

逢いたい人を待っていた


私は昨日までBちゃんと呼ばれ

大人からも

友達からも可愛がられた

柿の木を植える時

身体の倍もある鍬を

よっこらさよっこらさと

振っていたら

隣近所の大人たちが出て来て

にこにこ見ていた


「三年するとなるか知ら」

と云うと

「八年かかるよ」と大人達は笑った


ちいさな庭の柿の木は

私の生きていた印し


柿の葉の下から

「お早ようさん」

大声で呼んでも

誰も起きてくれない


お母さんが居てくれたら・・・

と思う間に

別れの時が来た









裸木


苦渋のミゾを幾筋も蓄えた奇人が

風雨に荒された私の膚を見上げ

独白を繰返している

━━よくもこんなに荒されて

生きてゆけるものだなあ━━

私は老人の持つ刃物に

すごく恐れを感ずる


かしげた首のあたりに

最後の一枚の葉が

吸いつくように落ちた

何の未練もなく脱ぎ捨てた葉は

足下で腐食し

ミミズの衣食住となり

私もまた私の落葉の美味を称賛しつつ

一日でも生きのびようとすることは

いけないことだろうか



2030年 農業の旅→ranking



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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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