向日葵
東から西へ 西から東へ
炎熱の日ごとをのた打ち喘ぎながら
駆け巡った苦悩の地獄から
かち得た謙虚な向日葵の姿よ
お前の此頃の姿は
日が東にあれば東に向いて悠々
日が西にあれば西に廻って悠々
何と悠々たる静かな姿よ
それは捉えるものを捉えたものの
力強さを私に感じさせる
蛹
冬枯の灰色の曠野の果から
音もなく現れる凍雲は
さむざむとした虚無の影を落し
また曠野の涯へと消えていく
その下に乱舞する廃滅の吹雪
ああその曠野に一匹の蛹は
肌を裂く潰瘍の吹雪に疾病み爛れている
だが蛹は忍苦の凍土の中に
ささやかながら徐ろに萌芽する
土のひび破れる音を聴いている
身ぬちに蠢めく魂の胡蝶を感じている
ああふたつのいのちひとつに抱き合い
解け合っているよろこびの陽炎は
しずかな強さでたちのぼっている
定道一樹さんの略歴
邑久光明園に在籍。定道一樹はペンネームと見られ、詳細は不明である。1954年刊の「光の杖」には故人とある。