あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  松尾進さん



灰色の中から


やたらに汚してしまった私の絵本に

いまもなお

微塵もしみのつかない一部がのこっている

かすりの着物にカバンをはすにかけ

小学校へ通った道

きりたった川沿いのあの道の辺に

天の童べがつばさをやすめ

いつのまに虹をもてあそんだか

夏が訪れるとこんなふうに合歓ねむの花が咲いたのだ

わだちの跡がずーっと続いている道を

ふと振り返ると

いくつもいくつも いくつもいくつも

緑にふちどられて浮んでいた薄桃色の合歓の花

それは心配気のない私のヨセフとマリヤさま

いまはひと目みることも出来ないが

こともなげに春が吹きやられると

もうすっかり汚れてしまった絵本が

風に揺れる祭提灯のふさのように

私を迎えてくれる

ああ それが天国へ生れる因であるにしても

ないにしても

最後の日 冥府とやらへ背負ってゆける

私の穢れなきひとこまである











暴風のあと


暴風でゆがめられた花圃に

菊が 帯を束ねなおして佇っている


支えにもたれた気安さは

朝の窓へ静かに眼をつむると

私の中にも きっと見出せそうな

あなたとの微笑ましい関係


生きねばならなかった運命に

秋が去って 秋が来て

不遇・・・即 幸いを沁々想う


菊は今日

つぶさになめて来たもののみなりで

あふれる朝を一杯抱いて佇っている









迎春風景


もうすっかり忘れていた

・・・・・いや

心のかたすみでは

絶えず耳をそばだてていた

かそかな足音のように

よんでは よんでは

過ぎ去っていくものがある

つと 扉の内側にたって私は

昨日の風景を眺める

長い冬のしおきにゆがめられた木石

もどかしい そんな表情の中で

池の面だけが迎春譜を慄わせていた

だれに見られなくてもいい

気付かれなくてもいい

愛する人のやさしい掌のような水面

私の心の秘密

朝の二月の陽光は

白い指先で

池の面に紙切をもて遊んでいる



松尾進(畑数馬)さんの略歴
生年不詳、福井県の出身。1947年7月邑久光明園に入所。自治会活動のほか、宗教活動(浄土真宗)にも熱心に取り組んだ。畑数馬の名で『この坂道』(1996 私家版)がある。2002年6月3日87歳で死去。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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