あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  高沢道雄さん


そよ風に想う 


そよ風はどこからともなくやってくる

油壺のような島の入江をたゆらし

山の中腹の果樹園の葉なみをゆるがし

静寂と沈黙にあぐむ赤屋根にやってきて

柳 松 楓 無花果

そよ風は緑にすいた葉うらをかえす

いま入園間もなき若者が装いなく

病棟の窓辺にもたれっていた

故郷からする揶揄と軽蔑

身の内の熱と癩菌

その為に若者の心魂はそこね

疫されて無感覚な膚を湿して

そよ風のまにまにおのれの想いをゆだねていた


彼がまだ少年であった頃

そよ風の拠ってくる源泉を

彼は不可思議の心で誰れ彼れなしにきいてみた

「えゝなあ」「えゝなあ・・・」と頷いて

けれども大人達は ただ

陽焼した膚をそよ風にしめすだけだった


また或酷暑の午後

彼は遊泳の黒潮につかれ

「黒いぞ」「俺の方が本焼だ・・・」と

友と膏ぎる腕をなべて見遣った

さてもその時ふいと浮ぶ小判型の白斑紋

彼は狼狽してシャツで秘密を包んだ

それから幾度暑が逝ったろう・・・

彼は決して人の前で膚を顕わさなかった


あてどもなく どこからともなく

夏の万物に渡って行く

そよ風よ

お前は孔夫子の

「周して比せず」という得を兼ねもち

そしてお前のさざめきは

ジュール・ロマンの「善意の人々」の情ある

世界意志のいぶきとも言えるであろう

かさんだ病者の膚をうるおし

悩むもの苦しむものの

心 こゝろをなごませ

宇宙の造化主の真心をそのまゝ

夏の酷暑の地表に

そよいで行く



高沢道雄さんの略歴
1931年2月1日香川県に生まれる。観音寺商業学校卒業後、天理教教会にて布教活動をしていたが発病。1954年5月5日邑久光明園に入所。「楓」に毎号投稿していた。1968年12月14日死去。



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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