あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  松本明星さん


眸の底に


それは

時計の振子の様に

私が大地を探る杖の音の様に

編棒のふれあう音

妻の膝の上には

赤い毛糸玉がころがっているのであろう

このかすかな音は

肉体のバランスを失った

古沼のような私の生活から

支えてくれる妻のささやきでもある

生活の疲れを秘めて

編棒を運んでいる妻の眸が

盲いた私の眼底に

ほほえんでいる










八つ手の葉のように

大きなたくましい

そんな手が今の私にあったら

杖を握ることも箸をもつことも

凡てが凡てでないように

救われていたかも知れない

だが

私を包んでしまった深い闇には

きれめがない

呼んでもわめいても

もう昨日は昨日でしかない

そんな人生の沼底から

最後につかみ得た一本の藁すべのような杖

それに依って凡てがささえられないにしても

枯葉のような両の手で

抱えこむようにしてすがる杖に

私の生命が通う時

そこから新しい天地がひらける

そうなることを信じながら

私はきれめのない闇をみつめる


松本明星(松本明生)さんの略歴
1919年10月20日大阪府に生まれる。1939年邑久光明園に入所。「俳句作家」(大阪)同人。1994年12月6日死去。遺句集『娑羅の花』(1995私家版)。
 

ハンセン病により盲目になっても、それでも生きていかなければならない人生が、厳しすぎる。その状況を自分におきかえてみることは、あまりに怖い。

私を包んでしまった深い闇には

きれめがない

呼んでもわめいても

もう昨日は昨日でしかない


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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