あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邑久光明園  秋田穂月さん





雪が降る

雪が

降ってくる

追想をかがやきながら

庭のユスラウメの枝を

おしつけて

雪が降る

降っている


ぼくは

すこし裏戸をきしませて

あける

裏山の槻の大木が

八方に大きく

枝をひろげている

雪におさえこまれても


動かない槻の木は

その尊厳を

雪に加飾され

声もなく枝をひろげている


雪が降る

降っている

田舎の冬は

息もひそめ

そそくさと

暮れてゆくのだ


父がいた

母がいた

姉もいた

六つちがいで

いちばん口うるさい

姉だった


言葉すくなく

働くためにだけ

この世に生まれてきたような

父も

すこしべっぴんで甲斐甲斐しい

母も

口うるさい

姉 も

もう いない


雪が降る

降っている

冬の夜を

火を囲んだ

肉親のあたたかさ

それだけが

この世にひとりとなってしまった

ぼくの

みずみずしい光なのだ


別離の日から

父も

母も

姉も

ちっとも齢をとらずに

すっかり老いたぼくの裡で

火を囲んでいる









霜柱の賦


霜柱が崩れる

電柱が輝きながら

ぼくの足裏で

崩れる


過疎の村落の

土橋は

土くれの渇いたまま

草をはやしていた

この貧しい村で生まれた

素朴で純真な暖かい物が

流れている

この村の昔の鎮守の森が

僕の

うらぶれた肩を

幼い日と同じ翳を

なげかけるのだ


霜柱が崩れる

その音の確かさを

僕の五十年目の

ふるさとの

空を仰ぐ

父も亡く

母も亡く

姉も亡く

僕の

村落のすべてを

駆けめぐった

同級生達の顔、顔、顔

つまづいたまま立ち上がる事もできなかった


僕の過去が

どっと押し寄せてくる

この一瞬の長い長い

坂道よ


霜柱が

僕を包む

霜柱が

僕を呼ぶ

霜柱が

僕を少年にする

傷ついたまま

自分自身を

罵りながら

愛しみながら

遠くから来た

旅人のように

そっけなく

痛みをこらえている

僕が

そこに立っている

この

不思議な

人間だけがもつ事のできる

悲哀と喜びを

同居させながら

僕は

霜柱を

思いっきり

踏みつけるのだ




2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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