あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  朴湘錫さん  



病棟雑感



(最後の2ページです)

 オ・・・・・イ
 準夜のせわしい時間帯、それとは関係なく
 オ・・・・・イ オ・・・・・イ
 舟は出ないと思った。が舟は出る。
 まあーま、こんなに汚して、ほれ、そんなばっちい手。
 お尻がぶたれる場面が想像され、遠い昔が脳裡をよぎる。
 ぶたれても痛みを感じない母の感触、赤ちゃん嬉しそうだ。
 オ・・・・・イ
 
 たえずそばにいてほしい
 オ・・・・・イ
 たえず何かを語りかけて欲しい
 そうだ、彼は李さんである。
 慶尚北道のある地方のヤンバンの出であるとのことだ。
 ヤンバンとは働くことを知らない種族で、つまり支配階級なのである。
 国が亡び、権力を召し上げられ、土地を奪われて見れば、はやり雑草のそれで、いや、より耐え難い苦しみを味わって来たことは間違いない。
 李さんが入園してきたのは一九四四年、ある炭礦で強制労働に従事、そして発病、四十数年のいま、ふるさとも、家族を思い出す気力もなく、汚物をもて遊ぶ
 忘れることの幸せ
 記憶よ戻るな、今日も明日も・・・


 沈んでいく病棟の夜
 静寂を破って、ナースコールのブザーが鳴る。タイルの床を蹴って不しん番が駈ける。
 地獄より使者
 今宵はどの部屋に忍び入ったのか、しつこい奴、俺のこの部屋は遠慮してほしいものだ。
 又静寂が戻って来た。
 眠れぬ長い夜が続く。
 忍び入る気配に息を整えた。俺の生を確めに来た忍者なのだろう。そーっと夜具をかけ、忍び足で消えていく。
 天使とはなんだろう、
 汚物にまみれて、身も心も捧げる神よりの使者、それを希い強要する心の残酷を感じないわけにはいかない。
 白衣に身を包んで、俺たちの命を支えているこの人たち、天使にして天使に非ず、ビジネスの社会に生きる人なのである。
 といって、職業婦人と割り切ることは更にできない。
 やはり、俺たちの天使でありたい、と、祈りたいのである。



最後に朴湘錫さんの略歴をもう一度載せておきます。

朴湘錫(星政治/本名・朴錫相)さんの略歴
1919年5月23日、韓国慶尚北道義城郡北安面に生まれる。1944年3月3日、栗生楽泉園入所。2002年1月31日死去。合同作品集に『残影』(1973 私家版)、合同作品集『トラジの詩』(1987 晧星社)がある。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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