あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

大島青松園  塔和子さん





手のひらをひらくとなんにもない

無いことは無限に所有する可能性をもつことだ

幸も

不幸もこの手がつかむ

いつも

無にしていよう

無にしている手の中へは宇宙の翼

もっとも大きな喜びが乗る

私は無から生まれた

だから無はふるさと

いつもはじまるところ

朝の光よ瞬間瞬間の生の切り口よ天に吊るした希いよ

私が

手のひらをいつまでも無にしているのは

あなた達のため

ああそして

私の手のひらは生きるよろこびでひとときふるえ

すべてを無にして

また差し出すのだ








記憶


呼びおこそうとすれば

いつでも新しく浮かび上がってくる記憶よ

鼻や目や手が覚えている

古い一枚の画を

再び描き出すのにはなんの苦労もいらない

人に記憶という

こんなすばらしいものを与え給うたものよ

私はその神聖な鏡を

日毎夜毎磨いてくもりないものにする

だからいつでも

目の前に起こっていることのように

鮮明に私の記憶は描き出される

そして

春の日溜まりに

思い出を飼いならしてうずくまっている老人のように

うっとりと

それを眺めて暮らす日の多いこの日頃を

ふっと

考える







触手


あの夜もしあなたが一錠の避妊薬を飲んでいたら

私は産まれなかった

この明るみにいるものは

あなたの受胎ののっぴきならない結果

母よ

あなたの夜の満干は

私の生のよろこび私の生の不安

受胎の前の混沌につるされて

ゆれる不安とよろこびは

巻付く高さをさがす朝顔のふるえる触手そっくり

あの夜もし

あなたの夫が不在だったら

私は産まれなかった

父の精液の中を浮遊して流れたであろう私が

いまここにいる

肉体として形になったばかりに

あなたを母と呼び父を父と呼ぶ

いじらしい関係ははじまって

皿に盛られた赤いトマトを美味しいと思い

服を着るとき似合うか似合わないかなど

気をもみ

ペンを持って考えにふける私

このすべてのありなれた日常が私で

手足や顔をさすってまぎれもない存在の実体に

改めて会う

そしていまは

遠いふるさと土にかえったあなた達に

まきつくすべのない片方の触手を伸ばすのです







夏の夕暮れ


私は

何回言ったことだろう

お母さん私はあなたを誰よりも好きよ

お父さんあなたを誰よりも尊敬しているわと

それは何回言ってもたりなかった

でも夫よ

大人になった私が

あなたを誰よりも好きというのは大へんなことだった

それは

あなた以外のすべての男性を外に置くことだったから

あなたを選んだとき

いくらかの人の安心といくらかの人の失望がつきささった

でもひとりを選んだよろこびが

どんなにたくさんの痛みにも堪えられるものだということを

知る日があった

いま

夏の夕暮れの庭に向かって

こんなにもおだやかに

互いに

互いの中に存在している私達

もう誰よりもあなたが好きなどと

むずがゆく

不遜な言葉は

いらなくなって



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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