あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  武内慎之助さん


秋のノート


歪み崩れた夕暮の丘に

むらさきの雲が一刷毛

風はひんやり頬をなでてゆく

伸びきった荒草の陰に

私は秋のノートをひろげた

ひぐらしの孤児が

落葉松の彼方の灯を見て鳴いていた


つぎの日丘は土砂降りの雨だった

あのひぐらしの孤児はどこへ行ったのだろう

朴の葉が一枚

裏と表を見せて散って来た

破れたゴム長に水が滲み

秋が重たくのしかかって来た


雨があがると

こおろぎの饒舌がはじまる

かくれ住むいのちのはかなさを━━

私はページをめくり

真実の秋の色を 音を 匂いを

残さず記していた







夏炉に寄りて


今日もいちにち雨降りだった

暗いともしびの下に

細い焔をあげている夏炉へ座り

わたしは ごろごろした灰をかきならしていた


いつの間にか

炭のかけらや灰こごりが

童話の国の小人になって話しかけた

「おじさん くよくよするんじゃないよ 貧しきもの 病めるものは幸いなりっていうじゃないか」


だが 私はまったく疲れ果てた

長い長い病床の旅だったから


中耳炎の耳が痛い

湿布のしずくがぽたぽたと灰の中へ落ちた


けし粒のような荷物を背負った小人は

「いちにちでも長く生きのびようぜ」

といって

どこかへ姿を消してしまった








落書


私の前に白い雲があらわれてくる

谷を越え高原の空より

雲はドールバックしながらあらわれてくる

わたしはその雲に

ただ世に生れてきたのを喜びながら

力いっぱい落書する

一字一字に私の人生と人間の真実とを

心をこめて書いてみたいのだ


やがて私の眼が閉されると

太陽は浮彫するように

私の落書を写してくれる


人々が幸福の玩具をもてあそんでいるとき

私はただ一心に生命を思い

雲に向って書きつづける







千代子の手紙


病床の私のところへ

雑草の丘を登って

姪の千代子から便りが来た

一瞬 忘れがたい遠いふるさとへの

ノスタルジアが湧く

私は白樺の葉かげでデスタンスのふるさとをよんでいる

八十ちかい父が灼熱の大地の野良仕事で倒れたことと

戦死した兄のあと姪の千代子がたった一人で野良仕事をうけついでいる

牛を使い畠を耕し

骨をも砕く労働

灼きつく太陽

流れる汗

疲れ切った夜

祖父の看護に

休みない苦しみを告げて

父よ生きて

生き抜いて

千代子よ 歎くな

苦悩も孤独も人間のもつ共通した悩みなのだ

どん底の中の灯

求めよというのは無理かもしれないが

世の中はそれのみに堪えている人ばかりだ

私は窓越しに

さらさらと散る落葉のはかなさを見た


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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