あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

大島青松園  塔和子さん



妖精


春の土は

すべての生の胎動を秘めてやさしくぬれている

このぬれた土の上で

草が生えたそれはもう枯れることをまぬがれない

動物が生まれる

それは死がひとつふえたことだ

生まれない前

死はなかった

生まれたところから

死を生きることによって生き

いつか死だけになる

春の土の上で

はじまったものらの胎動をききながら

私はふと

生命の妖精のように

手を差し出している黒いかげを見る

そのかげと共に

すべての生は

ただひたすらに生きようと思いながら

死へと上昇するほかなく

上昇している










私は沙漠にいたから

一滴の水の尊さがわかる

海の中を漂流していたから

つかんだ一片の木ぎれの重さがわかる

闇の間をさまよったから

かすかな灯の見えたときの喜びがわかる


過酷な師は

私をわかるものにするために

一刻も手をゆるめず

極限に立って一つを学ぶと

息つくひまもなく

また

新たなこころみへ投げ込んだ

いまも師は

大きな目をむき

まだまだおまえにわからせることは

行きつくところのない道のように

あるのだと

愛弟子である私から手をはなさない

そして

不思議な嫌悪と

親密さを感じるその顔を

近々とよせてくるのだ







胸の泉に


かかわらなければ

この愛しさを知るすべはなかった

この親しさは湧かなかった

この大らかな依存の安らいは得られなかった

この甘い思いや

きびしい思いも知らなかった

人はかかわることからさまざまな思いを知る

子は親とかかわり

親は子とかかわることによって

恋も友情も

かかわることから始まって

かかわったが故に起こる

幸や不幸を

積み重ねて大きくなり

繰り返すことで磨かれ

そして人は

人の間で思いを削り思いをふくらませ

生を綴る

ああ

何億の人がいようとも

かかわらなければ路傍の人

私の胸の泉に

枯れ葉いちまいも

落としてはくれない







崖の上


遊んでいてもぎりぎり

いつも切り立つ崖の上

怠惰の淵へ落ちるか

悲哀のふちへ落ちるか

思考するのもぎりぎり

危うく踏みこらえて

青白く光る一瞬に命をたくすか

ときたま平らなところにいると不安で

すぐに

先端へ走り寄る

端にいないとなにも出来ない不具の身

不具である私の

私が私であることによってふるえる

この快感

この充実感

ぴいんと張った内側の

一本の線によって生き

その他のところは

死んでいる


塔和子さんの略歴
1929年愛媛県に生まれる。1943年発病、大島青松園に入所。

3月16日(日曜日)の新聞で、『ハンセン病元患者の詩人「塔和子さん」が本名で故郷へ70年ぶり』と、生家跡のある美しい海岸風景とともに大きく掲載されていた。
 塔さんは愛媛県西予市明浜町田之浜に生まれた。9人きょうだいの上から3番目。13歳で病気がわかり、瀬戸内海・大島(高松市)にある国立療養所大島青松園に隔離された。
入園当初、姓はそのままで、名を「和子」と変えた。作品を発表するにあたり、24歳で姓も変え、「塔和子」と名乗るようになった。身元がわかって家族が差別されないよう、実家につながる痕跡を隠したとされる。
生涯に19冊の詩集を発表し、1999年に高見順賞を受賞。昨年8月、83才の生涯を島で閉じた。多くの入所者と同様、療養所の納骨堂に園名の塔の名で納められた。
分骨を進めたのは塔さんの弟の男性(77才)だ。葬儀で喪主をつとめたが、名前を言えず、「塔の弟」とだけ語った。本当は姉を本名で送りたかったが、塔さんの存在を隠して結婚したきょうだいのことなどが頭を離れなかった。「ぼくは逃げている」と泣いていた。
転機は昨年末。西予市が広報誌で15ページの塔さんの特集を組んだ。名誉回復の一歩だと感じた。男性は同市を訪ね、塔さんの詩の朗読会を見学したら、参加者から声がかかった。「田之浜じゃあ悪くいう人はおらん。『塔和子を生んだまち』になっとるよ」・・・。


2030年 農業の旅→ranking




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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在64才、農業歴28年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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