道
遠くはてなくつづく道
田んぼをぬけてつづく道
なの花咲けるこの道を
はちのはおとをききながら
たのしくゆっくりあるいてます
浮雲流れる空のはて
きょうも向かってあるいてます
故郷につづくこの道を
ひばりの声をききながら
きょうもゆっくりあるいてます
幸福さがしてそらのはて
きょうもさがしてあるいてます
かならずあると信じつつ
きょうもやすまずあるいてます
A・Aさん
『南風』1958年3月28日
顔
梅雨で池はいつも満水だ
雨がやんだらいつも
ぼくはこの池にくる
それは
こいを見るのではない
きょうも学校の
休み時間に
池をそっとのぞく
すみきった
水の上に
ぼくの顔がうつっている
何か知らない暗い思いがする
その時 こいがきて
水をうごかしてくれた
ぼくの顔はしわができた
ぼくが年をとったら
こんなになるのだろう
この外にももっと
かなしいものがあった
M・Mさん
『南風』1958年3月28日
ふろ帰り
外へでた
ひんやりとする風
肌にきもちよい風
からだ全体爪先のばしたような気
髪の毛からは蒸気のにおいがする
洗い髪をくしでときつつ歩いた
二十間ぐらい歩いたとき
はや髪の毛は凍って
とくたびに
さらさらと雪のようなものが
くしにかかってくる
地はかたかたと霜一面
タオルも凍った
ふろ帰りの人の後からは
白い湯気がおってゆく
D・S子さん
『南風』1958年3月28日
はてない野原
健児ケ丘から見る
広い広い野
はてしなく続く
丘があり谷があり
また続くものは野と畑
あの広々とした平原をかけてみたい
広々と続く野を━━
自由の身になる時はくるであろう
その時こそはあのような
広い野で
何もかも忘れ
ただ夢中で遊ぶだろう
E・K子さん
『南風』1958年3月28日