羽根の音
あれは・・・・・・赤い羽根
そうよ━━きっと
こだまをよんだ
音のなかに
ふうわりと 乙女の夢が
乗っていたから・・・・・・
今のは・・・・・・白い羽根
そうよ━━きっと
しじまをぬいた
音のなかに
離れ住む親と子の
ひたすらな
祈りの聖火が
燃えていたから・・・・・・
崖下の日だまりに
いつまでも杖を止めて
聞いている
音・・・・・・
白い羽根 赤い羽根
・・・・・・・・・・・・・・
ふと気付くと
私の過去が
いつのまにか
羽根の片隅にすがって
大空を
春雪
私は
いそいで探りよって
窓を開けた
雪が
浅春の別れを
舞っていると言うから
優雅な幻をだいて
じっと聞く
舞姫のうた
それはかなしいまでの
静寂・・・・・・
そのしずけさのなかに
永遠のきずなを
さがしていたら
さーっと風に乗ってきて
雪が
私の唇に
捨身を現じた
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