秋の翳
秋津のぶつかる音が
私のみけんで外れる
あれほどあつく灼けついていたいらかの
かなしみが
その後の消息を断つように
私のうしろに消え去ってしまうと
今日は
松風がきゅうに輝き出し
みちと云うみち辺には
ところかまわずバッタが
宙返えりする
私の虫歯のいたみを
どうにか桔梗の花かげに
美しく 捨てては しまったものの
それでも
私の外は
広い 海である以外には
私は
何も云うべき言葉を
持たない
日附け
一坪の
花園の芝生を
蹴上げるように
山茶花の花びらが
こぼれ散っていたのは
昨日の夕暮であった
入水━━
そんな事件が
私達の園内をさわがしたのも
遠いことではない
一日違いの
昨日の出来ごとであった
それから
まだ何かがある
しん夜は
賑わった
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