外科室にて
ここでは
天国と地獄が
いみじくも融け合い
ひそやかに息づく
互に和み合っていた
もはや
どの様な希望も夢も
芽生えそうもないものにも
ここではなおも望みをつなぎ
ピンセット ゾンディ メスと
器具のかち合う音は冷くとも
それらを通して交う体温は
ほんのりこの部屋を温めた
あゝ・・・・・
ひしめき 並ぶ
垢まみれの醜怪に歪んだ手と足
灰色に
褪せ 萎び 腫れた貌 々々
・・・・・・・・・・・・・
臆せず たじろがず
胸に十字を切りつつそれに立ち向い
時に白い指先が血膿に染っても
ほのかな微笑に拭いとる 人の姿よ
ここは地獄 修羅の巷
こここそ天国 パラダイスの都か
冷たいタイルの床には
どす黝い血糊がのたうち
膿汁の浸みた繃帯が這い廻っても
見よ!
玻璃戸近くの小棚の上では
いつか春めいた光を浴びて
一握の草花が
紅く 黄色く
ゆれているのではないか
瀬田 洋さんの過去記事