『200万にはならないだろうが、150万くらいにはなるだろう』、就農準備期間中にはそう考えていた。現実はその半分にしかならなかった。
『農業には向いているが、能力はかなり劣る』、就農準備期間中にそれもはっきり感じていた。
やっぱり、最終的には技術力だと思う。ある程度見栄えの良い、味のよい野菜を、一定量作るという技術。
その技術力を磨いてこなかった。
磨く機会がなかった。
そんなに磨かなくても間に合った(売ることができた)。
しかし直売所出荷となると、今までのような野菜では売れない。
作り方をもう一度教えてもらおうと思う。
20年してきたが技術力はほとんどあがっていない。しかし長年の経験で、当地ではどの野菜に、いつの時期に、どんな病気や害虫が多いかわかっている。
作りづらい野菜、作りやすい野菜もわかる。
台風の影響を受けやすい野菜、受けない野菜もわかる。
また、不得意作物、得意作物(これは少ない)もすっかり定着してしまった。
アブラナ科四天王(ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ)のうち、カブは特に虫害が多い。そしてカブは出荷する時に「葉つき」が望まれる。
来年からはハクサイ、キャベツ、ダイコンの3種類にするかもしれない。ダイコンがあればカブはさほど食べない。
草の少ない冬に、ハクサイとキャベツはニワトリとヤギの餌にもってこいだが、カブはそれほどでもない。たくさん作れば、商品価値のないハクサイとキャベツも比例して多くなるからそれらは緑餌にまわす。
2頭飼えばヤギの特性がよくわかる。それぞれ個性が違う。オスは愛想がよく表情が豊かであるが、メスはあまり愛想がなく表情もオスほど豊かでない。
雨が降り出したり、夕暮れになると、メエ~と鳴いて小屋に戻りたいことを促す。鎖をはずすと小屋の方に向かって一目散に走り始める。まだそのスピードについて行ける。
朝も、右方向か左方向か、方向だけ決めてやれば、前日につながれていた場所に向かって小走りになる。今月で満1歳が来る。
サツマイモに使っていた黒マルチを片付けながら、黒マルチが必須のこの作物は、止める(友人から買う)か、自給用の少量だけにしようとつくづく思った。畝上には新品、畝と畝の間は使い古しの黒マルチを使っているので、片付ける時にかなり時間がかかる。
サツマイモの他に、サトイモ(水の要求量が多すぎる)、ヤーコン(天候に大いに影響される)も自給用だけにしたい。
サツマイモとサトイモの入らないワンパック野菜(セット野菜)は考えられない。
机でうんうんうなっても、いい知恵は浮かばないが、田んぼだと、一瞬、ひらめくことがある。田んぼの土の上では身体と頭がリラックスしているせいだと思う。革靴ではない地下足袋の感触は大地との一体感になる。
バニシングポイント(消滅点)まで、一介の百姓でありたい。