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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  森岡康行さん


森岡康行遺歌集


妻とわれ音と匂ひにたよりつつ干鱈ひとつ焼き上げにけり




どちらかが見ゆれば消ゆる憎しみか妻も噛みしむるらしき沈黙





妻のため耳傾けて熱したる鍋に油をしたたらせをり




待ちわびし個室に移りはやばやと盥に妻の背を流しやる




盲夫婦われらが部屋内の往き来にも手を打ちて位置知らせあふなり




匂ふがにしなやかさ持つは何の落葉さぐりひろぐる掌の上




点筆をくくり持ち妻の書きし随筆入選と今日知らさるる




点字書の尠き時にわれら編む小機関紙が期待されをり




逢ひたしと送りし手紙数知れず母を苦しめき二十二年よ





この疲れ無為の故より来るならむ水屋を拭ひ手すりを磨く




静止すれば海も忽ち凍らむか小さき入江の結氷したり





エンジン止み下船準備のざわめきの中よりもとむ老い母のこゑ





わが前に声なく立ちしその人をしばらくの後母とは知りぬ





手探りにわが淹れし茶をすすむるにしばらくにして茶をすする音





盲ひわれらにそひ遂げよとて老い母が結婚届いま書き給ふ





もの言えば涙とならむ母の船去りたる浜に妻の手さぐる





受取りし便りただちに読みくるる女子補導員は涙ぐみつつ




盲将棋してゐる吾らのみ残り昼餉の後の野は風のなし





面会の姉に手を引かれゐる妻のはればれと笑ふその声きこゆ





吾が見しは妻の乙女の頃の顔それより知らぬを幸せと言ふや





もろもろの音にたよりて歩むわれ夜霧は杖の音をうばへり





老い母が仕立仕事に得たる銭盲ひ夫婦の吾らいただく





幾千年の癩絶ゆるべし療園にわれらが生くるを終りとぞして



森岡康行(広岡一夫)さんの略歴
昭和4年三重県生まれ。昭和15年秋小学5年生で発病。昭和15年9月6日長島愛生園に入園。昭和24年失明。昭和33年律子と結婚。同じ頃「形成」に入会。「潮汐」「未来」所属。昭和61年3月没。入江章子は実姉。『あらくさ』(昭和30年)『陸の中の島』(1956年)『あかつち』(昭和31年)『青芝』(昭和32年)『風光』(昭和43年)『海光』(昭和55年)『森岡康行遺歌集』(昭和62年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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