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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

大島青松園  林みち子さん


夕映ながく


故国遠く独り病む身の如何ならん小声に友はアリラン歌う




「親不幸なる子」と五歳の日のわれの今日を言いあてし女の遍路




咽喉切開わが受けし日と母の死の重なる疼き消ゆることなし




ライ園の夜空に天ノ川仰ぐここに少女のいのち古りにき




目のくもり払わんとして瞬きをまたくりかえす昼の孤独に




宵はやく慣いとなりて床に入る眠るも眠らぬも時のままにて




うかうかと見ていしわれか聞くのみの夫が確かなストーリーを言う




杖にさぐる人それぞれに癖ありて夫の帰りもその音に知る




一本一本苦しみしのち落とされて指失せし手が語るわが過去





しのび来て独り見て立つ生家跡蝶は遥けき日のままに舞う




日本をうち破りたる米国の治癩薬にてこの身癒やさる





矢面に立ちて自治の灯ともしたる人逝きぬ菊のとみに薫る日





生けるものかく逞しく美しき蜘蛛はさかさになりて巣つくる




一つ一つ身体の自由うしないて今のいのちに縋る一眼




おがむ形に両手合わせて物つかむその片腕の患みて窮まる





光みる眼をもたぬ夫と居て点す灯りはわれのみのため




古稀迎うる吾に寄りくる子もあらずグラス二つを満たす灯の下





衰えをとみに覚ゆるわが視力春の霞か黄沙の降るか




うからなく家もあらざる古里にわれを包みて山あたたかし




人住めばそこに道あり柿熟れて病みて離りし古里に似る





目に光ある間に何かなすべしと声なき声に心せかるる





今は今の心にたりて生くるほかなかるこの身よ鳳仙花散る





耳のうしろに僅か知覚の残りいて生きの証のごとく噴く汗





かなしきまでにわれはこだわる嫋やかな五本の指の動く表情





風呂の湯のあつさ加減を舌にみる麻痺せぬところそこのみありて





海を出で海に没りゆく日のさまを此処に仰げり少女老ゆるまで



林みち子さんの略歴
大正4年11月徳島県生まれ。7歳で発病。昭和8年6月大島青松園に入園。昭和32年1月「関西アララギ」に入会。38年6月萩原澄と結婚。昭和47年第10回関西短歌新人賞受賞。昭和48年夫・萩原澄の古里に二人の歌碑建立。昭和60年1月関西アララギ年間優秀作品賞受賞。『やどりぎ』(昭和43年)『三つの門』(昭和45年)『心よ羽ばたけ』(昭和52年)『夕映え長く』(昭和63年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)。傘寿を夫と共に迎え「らい予防法」廃止を記念して、歌文集『開かれた石の門』(平成8年・共著)を刊行。



2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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