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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

多摩全生園  内田静生さん



分籍



俺は俺の穢れた戸籍を

このんで故郷から引き抜いたのだ。

分家したのだ。


斯うしてベッドに薬瓶を抱いていても

ハハハ・・・俺は一戸の戸主だ。

だが、自分の宅地をも知らない

一軒の主になってしまったのだ。


俺の宅地は何れそこいらの空き地だろうよ。

お日様が照っているだろうか、

子供達が鬼ごっこしているだろうか。

けれど、日が暮れたらさびしく

霜枯れのペンペン草に夕風が吹いているだろう。

あゝ、経帷子を着た俺の行くところは

たゞ一つその空地だけになった。

俺はペンペン草に膝小僧を抱えて、

梢に痛い三ケ月に刺されながら

いつまでも

経帷子をしらじらと風に吹かせているだろう。

(注)経帷子とは死者に着せる着物








陰影


野末のとおい秋の落日を

懸命に追っていると、


草も 木も

花も 石も、

みんな俺に背を向けて

くろい影をながながとげていた。


ふと 振り返ってみると

地上に黝々とながながと

俺は俺自身の陰影を見た。

噫 俺にもこんな醜い陰影があったのか。


おづおづ
懺悔はじらいの眸を上げると

おゝ何と 落日にあかあかと

みんな明るい親しい貌であることか。


やがてみんなの上に夜がやってくるのだ。

せめて俺はこの暫くの間を

落日の野に後向きに座っていよう。


内田静生(醍田彬、内山康郎)さんの略歴
1922年7月23日石川県に生まれる。1930年5月11日全生病院に入院。1946年3月5日死去。小説・詩などを「山桜」に発表。小説は三篇が『ハンセン病に咲いた花 戦前編』(2002 皓星社)に収録されている。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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