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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

長島愛生園  近藤宏一さん



コンクリートの道


盲目や足なえが永い間欲しがっていたコンクリートの道が

病院の広場を縦断して出来あがったという。

寒い夕方。

私はほこり臭い袷の襟をかき合せながら外へ出る。

鼻孔から頭の芯まで突刺す様な風はすっかり冬の風である。

私は馴れない探り杖に勇気を出して広場へ出た。

杖の先に固い手応えがある。

衰えた眸の中に白く光っているコンクリートの道。

私は撫でる様にそっと 杖をすべらせてみる。

こつこつ叩いてみる。

誰れも見て居ないようなのでちょっと歩いてみる。

からんころん下駄が鳴る。

もう少し歩いてみる。

萎縮した足の筋がのびのびしてくる。

胸がどきどきとはずんでくる。

私は思いきって道一ぱいに杖を振り歩き出す。


肩を張り腰に調子をつけながら

一生懸命に手を振って歩く。

体じゅうの血が一度に廻り初めた。

心臓が跳り出した。

杖も跳る。


がらがらと下駄が辺りに響く

息気をはずませ調子をとって、

私はどんどん歩く。

冷い夕風の中を一人で歩いている。

終点は治療室の入口まで、

いや何処までも歩いて行きたい。

胸に熱いものがこみ上げてくる。

目頭が熱くなってくる。

コンクリートの新しい道を歩きながら、

私は泣いていると云うのだろうか。

人間らしく歩けるので、

力一杯歩いているので。




近藤宏一さんの略歴
1926年大阪生まれ。1938年、11歳の時に長島愛生園に入所。子供時代から詩や作文を書き「愛生」、「綴り方倶楽部」などに発表。戦後、赤痢病棟の介護に従事した際に赤痢に罹患、ハンセン病が悪化し、失明、四肢障害を負う。わずかに知覚が残された唇と舌で点字を学び、盲人の仲間とともにハーモニカバンド「青い鳥楽団」を結成、楽長をつとめる。長島詩話会に参加し「裸形」等で詩を発表するほか、「らい詩人集団」同人として活動。晩年まで各地の学校、集会等でハーモニカの演奏、講演活動を行う。2007年、英国救らいミッションがハンセン病問題の啓発に貢献した人物に贈るウェルズリー・ベイリー賞を受賞。2009年10月5日没。


近藤宏一さんの過去記事その1

近藤宏一さんの過去記事その2

近藤宏一さんの過去記事その3

近藤宏一さんの過去記事その4


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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