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あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

栗生楽泉園  加藤三郎さん



あなたがたは倖せですか


あなたがたは倖せです。税金の苦労もなく、交通事故の心配だってなく、食うことの悩みもない、こんなにも空気のよいところに生活しているみなさんは本当に倖せです。と
ある参観者はいった


そういわれれば

クレゾールの匂いも

いやな悪臭にも 何時の間にか馴らされ

後遺症の顔を横目でみつめられた

あの表情にも

患者さん というくすぐったい呼び名にも

馴れっこになってしまった

鋤 鍬を握った この手に

スプンやホークを握り

一日三度の飯を食らって寝るのが仕事 

これが

人生だったら本当に倖せ者です


美しい首輪をつけ 鎖でつながれて

尾をふっている犬

きれいな籠の中をとびまわっている

小鳥をみるたび

”あなたがたは倖せです”といった

ある参観者の言葉を

私はくり返す 
 






生の意味


蛍光灯と

白い壁のかがやきに

酔いどれたように

眠っている


おまえの静かな寝顔を

おれは見ている

忘れよう 忘れようとして

郷里に残して来た

妻や子のこと

音信不通になっているものの安否

何度もおまえはくり返し

語った


ほほこけた口びるを動かして

先生さまや

看護婦さまたちに

ようしてもらって

ありがたい

もったいないほど ありがたい

なみだでるほど ありがたい

いいどごろで おれも

生き過ぎでまった と

おまえは

四十年も背負い続けてきた

その重みにいま

別れを告げようとしている。








慰霊祭


せききった悲しみの雨が降る

トタン板をたたいて

読経はいっそう 美しい声で沁みいり

入りまざる 今と昔

見える

見える

千三百余名の故人の顔

お供物の果物のように

積み重なって

笑っている


地獄谷と呼んだ

谷を耕して

作った段々畠で

亡くなった

栄養失調のおっさんの顔

死んでくれと我が子に頼まれて

青酸カリを呑んで死んだ

男の顔

山で首くくった

おかみさんの顔

みんな笑っている


顔 顔 顔

笑っている顔

郷里から追われ

親 兄弟から隔絶された

千三百余名

読経と線香の漂う

慰霊祭会場に

笑っている顔 顔 顔
 

加藤三郎(河東三郎)さんの略歴
1910年秋田県に生まれる。1948年栗生楽泉園に入所。1967年軍属物語『草津の墓碑銘』により群馬県文学賞受賞。詩集『僕らの村』(1992年 皓星社)。短歌は「アララギ」「潮汐」に所属。


2030年 農業の旅→ranking


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プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

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