FC2ブログ

あめんぼ通信(農家の夕飯)

春夏秋冬の野菜やハーブの生育状況や出荷方法、そして、農業をしながら感じたことなどを書いていきたいと思います。

邂逅

石田雅男様

「ふるさとへ帰る日ー石田雅男さんの半生」と題して秋の学習発表会をされた鳥取県の小学校の校長先生が卒業文集に書かれた「人生とは邂逅なり」。久しぶりに「邂逅」という言葉に触れ、うれしかったです。

あまり悲壮感もなく、どちらかと言えばおもしろく読ませて頂きました。最初からは読まず、目次をみて、興味を感じた項目から読みました。単元ごとに独立した短文だったので、読みやすかったです。

繰り返して読んだのは創作「凍てた饅頭」です。当時の森浦常吉が自分とだぶって見えました。37才の時、強制収容されたことは、森浦にとって運がいいことだったのか、悪かったのかどちらかわかりませんが、あの状況では、強制収容されたから、ひとまずは命が取り留めれたのでしょうか。

以下は「凍てた饅頭」の引用です。

『四畳半が四室の長屋のその一室で、隣の部屋には彼より3つ年上の65歳の森浦常吉がおり、2人は仲良く老後を過ごしていた。それは毎日話らしい話もないのに話ばかり交わして、療養所の生活を代表するかのように何かを話し合っては過ごすのであった。
 平穏無事な日々は結構なことには違いないが、2人の行動範囲も年々縮小されて、そこに必然的ともいえる世間的な話題との断絶が生じ、孤独と寂しさが日暮れの影のように迫ってくるのを覚えてやりきれないものがあった。平穏無事な生活の中の唯一の苦痛は話題のない沈黙の時の流れであった。しかし、こうした沈黙の箱の中に閉ざされた時、決まって淡い陽が差すのは錆びた遺物ともいえる遠い昔の思い出である。そして、2人の会話は何度も何度も語られ聞かされるものとなったが、それでもお互いに抵抗も覚えず、一方が懐かしそうに昔を語れば片方はそれに相槌をいれた。仕方なく聞いてやっている、仕方なく話してやっているといった構えは2人にさらさらない。何度も聞かされた話であっても楽しい話は心から笑えたし、悲しい話には深刻になって、その都度新鮮な感情が動いた。こうして時が過ぎ、僅かに生活している実感が1日の暦をめくってくれればよかった。
 
「癩」という重荷を背負わされた時、人生が終わったように思えた。確かに一つの人生は終わったが、現実に生きてきたことはある種の惰性であったのか、そして、そんないい加減な生き方であらゆる困難、屈辱と妥協してきたのか。
 いや、惰性で生きたとは思いたくない。何処かに生きることへの愛着、自分への愛しさ、それをなんとか正当化しようと努力してきたと思いたかった。

「自分の力で生きてきたように思えても実際はそうじゃない。人間は常に何かに生かされていると思うんじゃ」
「生かされている?」増尾は、意外そうにオウム返しで言ったのである。
「そうじゃ、お陰でこの療養所の考えられないほどの変わりようも知ることが出来た。患者も昔と違って人間らしく生活しとる。それに、ライ病も治って社会に出てゆくなんて信じられないほどじゃ。驚くことは最近、患者の若い人は看護婦さんと仲ようなって、社会で夫婦になっているそうじゃないか。増尾さんよ、考えられんのう・・・」
「・・・」
「まことに良い時代 になったもんじゃ」
森浦は心底から今日まで生きてこられたことを、「生かされている」と解釈し、感謝すらしている口ぶりが老後の落ち着きを増尾に教えているようで、この年齢になっても何処か訳の分からない焦る自分の生きざまを情けなく思った。
  一度の人生にあって少しでも悔いを残さないように努めるのは人間の常であろう。だが、それでもなお、多くの悔いを残すものなのか・・・。』


他に特に印象に残ったのが、
「亡き友の支え」、23才の若さで世を去ったK君のこと・・・目次をみてこれを最初に読みました。

父親のように親しく思っていた長崎県出身の「おやじ」さんの「里帰り」の話。

もう一つは「夕映え讃歌」。何の涙なのか「死」を期待すらして登ってきたはずなのに・・・。石田さんの絶体絶命の臨場感が、胸に迫りました。「凍てた饅頭」とともに、折に触れて読み返すだろうと思います。
 

これは『「隔離」という器の中で』を読んだ感想文です。コピーして石田さんにお送りする予定ですが、このブログを訪問してくださる人にも「長島愛生園」のことを知ってもらいたいと思いました。本に興味があれば石田雅男さんにお尋ねください。
郵便番号701ー4592 
岡山県瀬戸内市邑久町虫明6539
事務所の電話番号は0869-25-1033です。
その日に都合のつく人(体調がいい人)が5人ほどで交代でお話もされています。1人で訪問しても他のグループに加わらせてもらってお話を聞くことも可能のようです。前日に電話してご確認ください。
 
2030年 農業の旅→ranking



このページのトップへ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在66才、農業歴30年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
yuusuke325@mx91.tiki.ne.jp


セット野菜のワンパック宅配 みずた観光農園

最新記事

最新コメント

カテゴリ

カウンター

QRコード

QR

検索フォーム

月別アーカイブ