開眼後初めて眺む十五夜の月光波にゆらぎて映る
月触の如何になるかと見つめつつ友らと浜に話のはずむ
つぐみの子をとらえし猫より取り返し可愛くなりて籠に飼いおり
干潮の潟一面にあおさ生え女らいそいそバケツさげゆく
療友の庭に植えたるパパイヤの実のすずなりに暫し見つむる
療友と話を終えて帰る時九官鳥我にバイバイと言う
立秋の節ともなれば二期作の田植えの頃の故郷偲ばる
安里秀男さんの略歴
沖縄県生まれ。昭和17年2月兵庫県長洲で日雇労働中に診断を受ける。兵役免除となったが、20年の神戸の大空襲で帰郷。鶏小屋の半分に匿われていたが、昭和22年11月乗ったくり舟を客船に引かせて沖縄愛楽園に入園。昭和48年には盲人会に入会したが、53年3月手術により視力回復。井藤道子らのすすめで作歌を始め52年には短歌会入会。『地の上』(1980年)