毎日新聞 1月7日 1面
学長選 投票廃止2割
各地の国立大学が、学長選考を巡って大きく揺れている。
毎日新聞が全国の国立大学にアンケートしたところ、2004年の国立大法人化以降、約2割に当たる17校の国立大で、学長を選ぶ際に参考とする教職員の「意向投票」が廃止された。
04年以降に実施された意向投票結果の約1割が覆され、別の候補が学長に選ばれていたことが分かった。
現場からは「大学の自治が崩壊する」と危ぶむ声も聞こえてくる。
国立大は、国立大学法人法(国大法)施行を受けて04年から法人化された。以前は、教職員による直接投票で選ばれた候補者を文部科学省が任命していたが、法人化後は、学内外の委員で構成する「学長選考会議」が候補者を選び文科省が任命するよう改められた。
多くの大学で投票は「意向投票」として残り、選考会議が新学長を選ぶ際の「参考」とされた。
アンケートは毎日新聞が20年11月12~30日に全国の国立大86校に対してメールやファックスで実施し、79校から有効な回答があった。
一橋大や名古屋大など7校は無回答または一部回答。
教職員が投票する意向投票については、約2割(17校)が廃止。
法人化の当初、廃止は3校にとどまったが、14年に国大法が改正され、選考会議が主体的に学長を選ぶよう通知が出されると、14校が相次ぎ廃止した。
廃止理由は「(国大法の改正で)選考会議が主体的な選考を行うべきだと定められた」(筑波大)などの回答があった。
意向投票は学長選考にどこまで反映されているのか。
法人化後に実施された教職員の意向投票は、77大学で計305回(結果非公表の2大学除く)あったが、24校の計29回の投票結果が選考会議によって覆され、別の候補が学長に選ばれた。
学長の任期の上限については、79大学のうち筑波大や東京芸術大、東京工業大、大分大など計8校が廃止。
廃止理由については「安定的な運営のため」(弘前大、島根大)
「選考会議が優秀と認めた人材を任期で失うのは大学にとって損失」(鳴門教育大)などと回答した。