
国家機密を漏洩した疑いで解雇され、即逮捕。やがて起訴され、裁判闘争へ・・・。
この人がたどった道を、事実に基づきドラマ化した映画「オフィシャル・シークレット」が28日に公開される。
彼女の告発とそれを支えた人々を描く。
その中に印象的なやりとりがある。
「公務員は国のために働くべきだ」と追及された彼女がこう答える。
「政府は変わる。私は国民に仕えた」。
イラク戦争で開戦の大義とされた大量破壊兵器は見つからず、米国のブッシュ、英国のブレア両政権はその後、国民から手痛いしっぺ返しを受ける。
確かに、政権だけが国ではない。
この映画を見ながら頭をよぎるのは、森友学園を巡る財務省の公文書改ざんに関わり、命を絶った赤木俊夫さん(当時54歳)のことである。
組織から圧力を受けながら、ガンさんは自分の信念に従って行動し、赤木さんは死を選ばざるを得なかった。
台湾育ちで培った中国語の能力を生かし、英国政府の通信傍受機関で翻訳分析官を務めていた。
2003年1月、職場に転送されてきた米諜報機関幹部のメールがすべての始まりだった。
イラク戦争の開戦前夜、米英両国は、国連を舞台に対イラク武力行使への賛成を取り付けるため、スパイ活動を行っていた。
開戦工作の汚いやり口を示すメールの文面に怒りを覚え、日曜紙オブザーバーに匿名で手紙を送り、内部告発者になった。
上司の命に背くリスクは大きく、個人には大変なストレスとなる。「雇用は守られるか。年金はどうなるのか。不安は大きいです」とガンさんは言う。
それでも信念を貫き通せる条件として彼女は、「信頼できる弁護士やジャーナリストの協力を得られること」を挙げた。
赤木さんこそ「国民のために」働くことを誇りとしていた。
その彼の死が問うのは、日本社会のあり方である。
以上の記事は8月26日の朝日新聞の「ひと」と、8月28日の毎日新聞2面の金言「ガンさんと赤木さん」の一部を抜粋させて頂きました。
日本では「内部告発」は極めて難しい社会と思う。「すぐにばれる」・・・ということを誰もが身体中で感じるだろう。日本社会で小さい頃から育った経験上・・・。
だから、どんなあくどい行為で、それに反感を持ったとしても、見て見ぬふりをするのが日本人である。100人中100人がそうするだろう。
内部告発をする人は「日本社会の在り方がよくわかっていない人」とも言える。
信念を貫き通せる条件として彼女は、「信頼できる弁護士やジャーナリストの協力を得られること」を挙げた。
日本でも信頼できる弁護士やジャーナリストはいるだろうが、その前に、内部告発者の組織の中でいわゆる憲兵や自粛警察のような連中が動いて、内部告発者を容易に見つけ、その人が組織にとどまれなくしてしまう。
内部告発者を保護する法律があっても、そんなものは「日本では」全く役に立たない。
国家機密(社内機密)を漏洩した疑いで解雇され・・・日本では裁判になっても「必ず負ける」。
そして誰もが驚くような勇気をもって告発しても、伊藤詩織さんのように、日本におれなくなる(日本にいることがいたたまれなくなる)。
勇気を持った行動が「日本では」バッシングの対象になる。こんな日本では民主主義は進展しない。
それは他人事ではなく、たらいの水のごとく結局は、まわりまわって「それぞれの人生にも見えないところで影響を及ぼす」。