わが内の声を写せといふ言葉あり乏しきわれを真夜になげかふ
澄み果てし空にむかひて歌うたふ処女の一群あり枯原のなか
ねむごろに見舞ひの言葉のべ草葉厚相は予算削減の事実にはふれず
病む父のことにて争ふ祖母と母をかなしみ記す姪の日記は
吾ら夫婦に子供のなきを姪ら問ふ一夜泊りてしたしみしとき
己れより出でし汝の病と嘆きゐし父の亡きことも今の救ひか
看護りあふといふ言葉美しければにくみあひまた苦しみて守り来りぬ
瓶にさす柳の枝の蓑虫の生きゐて或る夜蓑のまま這ふ
入江章子(吉村章子)さんの略歴
大正11年三重県上野市生まれ。昭和15年三重女子師範在学中に発病。長島愛生園に入園。「萩の花」に参加。戦争中は退所して軍需工場に動員。昭和20年再入所。昭和24年菊池恵楓園に転園。伊藤保、津田治子らと出会う。「檜の影」「アララギ」入会。昭和27年入江信と結婚。昭和33年吉村章子の名前で「未来」に入会。長い空白の後、入江章子名で「未来」再入会。「牙」に参加。昭和57年度「未来賞」受賞。森岡康行は実弟。『菴羅樹』(昭和26年)『陸の中の島』(1956年)『海雪』(昭和35年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)『青天』(昭和62年)『辰砂の壺』(平成11年)
2030年 農業の旅→

