病みしより名を変え素性を秘しきて
襖越しに死んでくれよと長兄の言いいし声の耳を離れず
小学校卒えしばかりに家出づるを隠れ見送りいしははそはの母
徴兵検査の前に戸籍を移したりみずからのため家族らのため
らい予防法の象徴たりしコンクリートの壁を壊すと鉄球打てり
叫びたき思いに堪えて口つぐむ帰還兵君の長き沈黙
ビルマ戦線より辛うじて生還せし兵のやがて自裁す十年を経て
骨になりても帰りたしとは思わねど死たる後は後のことにて
味噌汁に浮かす青葱刻むとき嗅覚薄るる君を哀しむ
Author:水田 祐助
岡山県瀬戸内市。36才で脱サラ、現在67才、農業歴31年目。農業形態はセット野菜の宅配。人員1人、規模4反。少量多品目生産、他にニワトリ20羽。子供の頃、家は葉タバコ農家であり、脱サラ後の3年間は父が健在だった。
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