呵責なく引ずられゆきしここにして今はみ歌の碑が建ちてゐる
小部屋への希望容れられずに火葬場と解剖棟が建ち
病みすじと幼児いたぶられ早死にし弟妹化けこよ逢魔が時ぞ
防着辞しマスクもされず患者区に殿下参られみんな驚く
宮殿下ジョーク巧みに病むわれら大笑いさせきつい昨夏なりしに
手を握り胸さわらしめ頬ずりて馳せ帰りたり小悪魔めく
生き動くわれ映りおり盲い以後まみえ会えるは夢鏡のみ
斎木創さんの略歴
大正3年岡山県生まれ。昭和3年発病により旧制中学校3年で中退。昭和9年大島青松園入園。入園以来諸誌で歌を学び、「心の花」の他に地方誌に作品を発表。昭和13年「新万葉集」に一首掲載。昭和26年「花宴」入会、32年「第一回花宴賞」受賞。第二回角川短歌賞候補。昭和59年失明。昭和61年「歌林の会」入会。平成7年没。「龍」同人。『稜線』(昭和27年)『澪』(昭和29年)『陸の中の島』(1956年)『ハンセン療養所歌人全集』(昭和63年)歌集『海のこだま』(平成1年)遺稿集『斎木創歌集・角川書店』(平成9年)