友情
夕映えの小豆島は特に美しい
療養に疲れた軀
背と背を合わせ
いつまでも見ていよう
僕たちの友情が変らないように
療養に疲れた軀
背と背を合わせ
いつまでも見ていよう
僕たちの友情が変らないように
菖蒲から
母は
粽をむすんでいた
姉は
菖蒲湯の釜を焚いていた
父は
旅から帰って来て
鯉のぼりを立ててくれた
青い菖蒲を見ていると
巻きもどってくる
昔の懐かしいフィルム
面影
白い
蝶
がひとつ
秋も終り
の木立を縫うていく
別れのとき
姉が振っていた
ハンカチのようだ
絵本
もうその絵本はいらなくなった
あの子は
昨日まで何度見たであろうか
自分でよめないうちに
地を去っていった
・・・・・・・・
忘れられた絵本は
秋風にぱたぱたと鳴っていた
父
枯れいくものの中に
青白い月影をいだいて
湖水は静かに眠る
夜毎にほそる湖水の月には
あなたの面輪がある
父よ
若き日の戦塵に
生命をさらし
・・・・・
老いての敗戦に
娘まで奪われ
残された息子をも
癩の虜にしてしまったが
生きねばならない
宿命のゆえに
・・・・・
欠けいく湖月にも似た
顔写せよ━━
うちだ・えすい(内田恵水)さんの略歴
1921年7月10日奈良県生まれ。1940年光明園に入所。長期外出ののち1947年11月27日園に戻る。1958年受洗。詩のほかに俳句も親しむ。1998年5月2日死去。