晩秋
島の小高い丘に
およそ千の墓標は
日毎の汐騒をきき
落葉とささやきながら
渡りゆく鳥の群に
自らの心を託していた
ある日
島を訪れた旅人は
こんなことを云った
お前等はしあわせだ
風光明媚な所に立っている
お前等はのん気だ
働かないでもいいから
と
だが
その旅人は
ほんのちょっぴり
涙を流したほか
代りに立ってもよい
とは言わなかった
墓標は沈黙をつづけていた
墓標は沈みゆく
夕日の果をみつめていたからだ
上丸春生子(上丸たけを)(上丸武夫)さんの略歴
1912年3月17日富山県に生まれる。1940年7月9日、光明園に入所。詩作会会員としてよりも、卯の花俳句会会員としての活動が長い。俳句は戦後に始め、「ホトトギス」「玉藻」などの結社に所属。自治会役員も長期務めた。1983年3月18日死去。
俳句は2つしか掲載されていなかった。
故郷に兄の子として吾子卒業
墓守りも病者の作業落葉掃く